十分に機能する人間
4月からの真カ研の月例会は、英国のブライアン・ソーン著の『カール・ロジャーズ』を輪読している。毎月、担当者がレジュメをきって、読み勧めているのだが、日本語訳の問題もあるのかもしれないが、総括的な入門書なのにわかりずらいという声が多くて、若干、責任も感じている。
それでも、みんなで読むと面白い発見や気づきもおこる。カウンセリングという営みは、単なる甘やかしや同情ではないことが分かる。そこには、深い人間観をもとにした、自己の内面への厳しい視点と、他者への暖かいまなざしが同居し、いのちの営みを肯定した、自己と他者の成長の場であるといっていい。わたしが、建設的な出会いによって、わたしく自身になっていくという彼の仮説は、けっして、頭だけの理論や、絵に描いた理想論だけではないのだ。
本書の冒頭にある、カール・ロジャーズの生涯を読みすすめると、彼が、保守的なキリスト教の影響の強い抑圧的な家庭環境から、さまざまな体験や経験を通して、彼自身になり、超えていくプロセスは、感動的でもある。改めて、聖人君主的に崇められがちなロジャーズ自身も、古い価値観の抑圧に苦しみ、人間としての、または仕事上でのさまざまな挫折を経験し、さらには中年の危機、それを越えて革新的な挑戦と先見性、頑固なまでの実行力、さらに晩年には、放逸的(自由な)結婚観と恋愛、そしてスピリチュアル次元への傾斜などの、彼の生涯をの歩みそのものが、ロジャーズ自身が自身の力を最大限に生かし、彼自身に成っていき、そして超えていこうとするプロセス(生涯をかけた旅)を、共にたどらせてもらっているなと感じさせられた。
つまり、カウンセリングのめざす「十分に機能する人間」(もうすこしなめらかな表現がないのかー)は、理想的な人間であると共に、彼自身が体現しようとした世界なのだろう。
来月からは、いよいよ中核理論(三条件プラス一)に入っていく。
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