『あなたへ』
名俳優の大滝秀治さんの逝去が報じられた。父と同じ年の87歳、誕生日は1日違いなので、同じ時代を生きた俳優さんだ。高倉健をして、脱帽させる演技が、彼の最後の遺作となった。高倉健主演の『あなたへ』。
健さんの主演は、大好きなチャン・イーモウ監督の『単騎、千里を走る』以来。その間に、チャン・イーモウの方は、『王妃の紋章』』(色彩美もすごい歴史大作だけど、大味)、『女と銃と荒野の麺屋』(これも独特の色彩美と、コメディタッチのハリウッドのリメイク。けっこう楽しめた)、そして、『サンザシの樹の下で』(うーん。いくらなんでも甘すぎるー)と作品を重ねていたが、健さんの方は、沈黙を保ち、久々の出演である。
さすがに、御年を重ねられて、設定に比べると、何気ない歩き方に年齢の陰が感じられるのは悲しいが、もうこの際、そんなことはどうでもいい。
ロードムービーなので、いろいろな地方のシーンが出てきて、回想シーンも加わってくる。出発は富山。そして、飛騨高山、琵琶湖は知内浜、京都は九条大宮の高架をくだって、東寺の塔がアップで映る。うーん、母校が映るかなー?。大阪に、兵庫県和田山(いまや豊岡市)の竹田城は、雲海で幻想的な風景。そこから一気に、下関、長崎の平戸がゴールへ。
同時に、さまざまな名優やタレントがでてくる。健さんとの出会っで、世界がどんどん拡がり、結末の世界へとつながっていく手法だ。登場する俳優は派手なのに、ストーリーは静かな映画で、見終わってしばらくしてから、じっわりと感じるものが呼び起こされる。余貴美子の演技がいい。
映画の影響で、山頭火が読みたくなった。
どうしようもない わたしが 歩いてゐる
このみちや いくたりゆきし われはけふゆく
山頭火
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