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いわさきちひろ~27歳の旅立ち~

 絵本画家のいわさきちひろさんのドキュメンタリー映画、『いわさきちひろ』~27歳の旅立ち~は、感動的な1本。

120907_2 温かな、やわらかなタッチのちひろの絵からは、想像もつかない、挫折と逆境を乗り越えた強靱な不屈の精神性に、とにかく驚かされる。なぜ、彼女は、ここまで強いだろう。

 戦争の爪痕、満州での苦労、そして望まない結婚。その不幸な2年間の結婚生活は、心を開かない彼女を苦にした夫の自殺で幕。終戦、戦争協力者の家族としての逆境生活、空襲ですべてを失い、家も、仕事もない、バツイチの女。まったくマイナスだらけの中から、大好きな絵画をひとつり頼りに、27歳で自立した女性として歩みだす。その時の、幾重にも幾重にも線が重ねられた自画像は、鬼気せまるものがある。

 しかし、なかなか彼女の画風は受け入れられずに、葛藤の日々。それでも、戦争の狂気やまやかしに反対する信条で一致した最愛の夫(あれ? この方、共産党のとても有名な議員さんじゃないですか)との再婚、最愛(絵のモデルとなる)の長男の誕生。生活は苦しく、同時に権利の低い付け足し程度の挿絵画家の地位向上のための戦いを続けながら、才能が開花し、飛躍へ。その生涯の残りの時間は少なく、余白を残したままでの生涯を終える…。

 病と戦いながら、有名なベトナム反戦をモチーフにし『戦火のなかの子どもたち』。焔の中での母と子の絵が映し出される。その母の厳しくも強いまなざしと、その胸の中で安心しきった子どもの表情。静に涙がこぼれてきた。

 単に彼女の生き方に感激しただけでなく、こちらをも揺り動かされる何かが伝わってくる、まったく壮絶な55年の生涯だった。

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