越後十日町の家庭法座・旅情編
京都駅の0番線。北陸本線のサンダーバードに乗車して、越後十日町に向かう。今夜は法要があるので、大きな法衣鞄を抱えての旅だ。金沢までは2時間強。そこで、ほくほく線のはくたかに乗り換えて、まだ2時30分はかかる。
今年の北陸は記録的な大雪だったが、北国の雪も山沿いではまだ残っているものの、平野部は黒い大地になっていた。さすがにこの1週間、北陸も春の陽気は雪を溶かしたようだ。
富山を過ぎると、列車は日本海に沿って北上する。親不知の海が見えてくる。白波がたっている。越後ももう近い。古来より、この断崖を海岸線は北陸道の最大の難所として知られてきた。険しい断崖と波のために、親は子を、また子も親を省みることができないほどの難所だったので、親不知、子不知と言われきてた。いまやこの海岸線を高速道路と列車が通り、景色を楽しみながらの旅となる。この道を800年前に親鸞聖人は流人として通られたのだ。当時の流人としての旅はいかばかりであっただろう。列車が直江津に着いた。流罪の時、聖人はここの居多ケ浜(こたがはま)から上陸されて、最初の居を構えられた地だ。今年の9月の聖跡巡拝の旅でも、もちろん参詣する。直江津からは、ほくほく線に入り内陸に向かう。列車の終点は、新幹線と連絡する越後湯沢で、特急なので、十日町はその手前の停車駅だ。新潟に入っても拍子抜けするほど雪は消えていたが、ほくほく線の長いトンネルを抜けると、まさしくそこは雪国であった。上野国からではないので国境の長いトンネルはないが、ひとつトンネルを抜ける度に雪が深くなるのがわかる。長いトンネルを過ぎると、十日町駅についた。5
年ぶりにこの地をたったが、冬は初めてだ。
駅では、娘さんのFさんご夫妻のお迎えを受けた。道路も歩道も、きれいに除雪されている。道の両脇の雪の壁も、せいぜい1m~1.5mほどであろうか。やはりこの1週間は温かくて、一気に雪が溶けて半分程度になったという。それでも、ぼくにはこんな雪は珍しい。車中から、雪の壁を撮影したが、別に何も見えない。信濃川を渡ると目的地は近い。会館から目的地までは、約6時間の長旅だった。
今回は、F家の亡くなったご主人の年忌をもつことで、息子さん、娘さんの家族の人達に、仏法聴聞をしてもらいたいというFさんの思いで実現した。だから、法衣を持参したのだが、法要が主ではなくて、あくまで法話や法座が中心となる。夕方からの夜座と、翌朝の法話、そして少し昼座ももてればいいと思っていた。翌朝には5年前にぼくを招待くださった近所の同人と、Fさんのお兄さんもお参りされるが、今夜は、Fさんに、ご長女と、ご長男の2家族という、ほんとうの身内だけである。
新潟市からこられる長男家族を待つ間、近くの温泉に連れていってもらった。なんでも「自宅はヤカンのお風呂なので、一気にみんなが入らないとダメなので」とのこと。はあ、たしかに10名ほどいて、ヤカンでお湯を沸かして入れるのはすごくたいへんだなー、と思っていたら、「違いますよ。夜間給湯器です。つまり深夜電力…」と、ぼくの怪訝そうな顔をこして、お婿さんがすかさずフォロー。ああ、そうでしょうね。いくらなんでも、いまどきヤカンで風呂を沸かす人はありませんわ…。もっとも、朝起きたら、「2階はお湯がでないので、これで顔を洗ってください」と、ヤカンと洗面器が渡されたので、あながち間違いではなかったのかもしもない。なんとなくこんなトンチンカンな小さな違いが、親と子の間あることが、しっかりと問題意識として、みんなの心に浮き彫りに
なってきた、今回の法座コミニケーションを象徴していたのかしれない。
それはともかく、どういうわけかいま駅で初めて会ったばかりの方と、いきなり温泉に入ることになった。相手のことも何も聞かされていないので、お互いにどこか気まずい、おかしなものだったが、同学年という共通項もあった。このところ、あちこちで同級生とのご縁が多い。26日なので、なぜかランが浮いた温泉は、まだ4時を過ぎたところなのに、地元の爺さんでけっこう混んでいた。それでも、雪国ならでは会話を聞きながら、雪を見ながら露天風呂に入るのはなかなかいいもので、かなり温まった。
しかし、まだ本番の仕事はこれからなのである。
内容に入る前に長くなったのでここまで。
会場に到着したらところで力盡きる、典型的な低学年の子供大会の感想文のようなものである。
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コメント
かりもんさんの雪国旅情に思わず引きこまれてしまいました。
ヤカンもおもしろかった、雪と露天風呂、そして雪国の景色の中にとけたかりもんさが見えるようで楽しく読ませていただきました。
投稿: saisho | 2011年3月 1日 (火) 13:02
saishoさん、ありがとうございます。北国出身のsaishoさんには、雪の景色は懐かしいものでしょうね。
投稿: かりもん | 2011年3月 1日 (火) 23:16