『友川カズキ~花々の過失~』
今夜の京都は寒い。
夕食後、京都みなみ会館へ、レイトショーで映画を1本。 『友川カズキ~花々の過失~』を観る。
出演者、友川カズキの舞台あいさつがあるのだ。それでも、こんな寒い中で、外から並ぶのはゴメンなので、自力整体の前に整理券をもらいに寄ったら、なんと、3番。昨年の2月の前野健太のミニ・ライブ付の映画も、やはり3番だったなー。
http://karimon.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-a6ff.html
前野は若造だったが、友川はすでに還暦を迎えた親爺。シンガーというより、詩人であり、画家であり、俳優であり、酔どれの哲学者であり、アーティスであり、今日の日本では数少ない虚構の世界に生きる真の表現者といっていい。中原中也の「骨」に衝撃を受けて、上京後に詩人となり、ボブ・ディランなどのフォークの影響でシンガーとなった。スマートで、クール、おしゃれな今日の世の中にあっては、東北なまりの影響もあろだろうが、鉈のような鈍器の切れ味、重厚さは、時代の空気とは対極だ。だから、なかなか一般には受容されずらいものがあるだろうが、逆に、コアなファンも多くて、中年の男性が多かった。
映画は、フランス人のヴィンセント・ムーンが、2週間の密着の旅で、切り取った彼の世界観を映像にしている。監督は、すこぶる謙虚で、植物のようなインテリでありながら、たいへんな頑固な人だったという。友川本人も言っていたが、映像はジム・ジャームッシュぽくもある。友川の叫びのような、荒いモノクロのザラザラとして手触り感のある映像が画面を引き締めるが、けっして冷たくはなくて、一肌のもつ温かを伝える映像だった。そこには、監督と被写体との絶妙な距離感があったという。
舞台あいさつも、質疑を含めて30分以上あった。初めてみた本人は、シャイな人なのだろう。でも、アルコールのせいか、すごく饒舌で、ジョークを交えながら会話が続いた。ちょうど、異色の経歴で芥川賞授賞とり時の人となった西村賢太を絶讃する話が出ていた。以前から、彼の批評や本の後記の解説文を書いているそうだが、「今後、天から金が降ってきたので、きっと高級な風俗にも行くようになる。これからの作品はダメになるでしょう」ななどいう冗談も、けっこう面白かった。なかなか魅力的な親爺だ。
終了後、ロビーでCDや詩集の購入者へのサイン会。金のため、競輪のテラ銭のためだと本人は言っていたが、人を殴こるとなく、無頼詩人が社交的にサインに応じていた。ほんとうはすごい常識人なのだろう。たぶん、世の中に、建前や格好ばかりのニセの常識人が多いということか。
こんな時代が大嫌いなんだ。
私は永遠に唾をはく。
自分にかかってもいいんだよ。 友川カヅキ
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 『サマー・オブ・ソウル』~あるいは革命がテレビで放送されなかった時~(2021.10.01)
- 『ソング・オブ・ラホール』(2016.12.15)
- 『ミスター・ダイナマイト』~ファンクの帝王ジェームス・ブラウン(2016.10.21)
- 「わたしの7+7」(2016.08.15)
- 清志郎ばかり聞いていた夏(2015.09.01)
「映画(アジア・日本)」カテゴリの記事
- 映画「千夜、一夜」を新潟で見る(2022.10.24)
- 映画『名付けようのない踊り』(2022.02.09)
- 濱口竜介監督『ハッピー・アワー』(2022.01.06)
- 今年211本目は『CHAINチェイン』(2021.12.30)
- 終い弘法(2021.12.22)
コメント
友川かずきは夫婦揃って大ファンで、東京までライブにいきました。相方が今日、映画を観に行ってましたよ。私も近いうちに行きたいと思います。
投稿: きつね窓 | 2011年1月29日 (土) 01:36
絶対に、好きだと思ったわー。相方のめざしていたところぽいよね。
映画は、京都は今夜まで。明日は、大阪(七藝)で舞台あいさつ。昨晩は大阪でのライブだったそうで、二度と来たくないという関西での仕事は、競輪の金欲しさだということでした。
投稿: かりもん | 2011年1月29日 (土) 01:46
27日にボクもZENと一緒にこの映画見てきましたよ。友川さんのファン歴は2年と浅いですけどYOUTUBEの映像を見て一瞬で心をうたれてから、ファンになりました。ビリビリして心の叫びというような迫力のある歌なんだけど、どこか笑ってしまうようなおかしみがあるんですよね。うまく生きれません!すいません!ということを声を大にしてはっきりと言っているような。
おもしろい人です。
投稿: syunki | 2011年1月30日 (日) 00:13
syunkiさん、うんそうでしょう。
舞台あいさつがあるので、最終日まで待ったけれど、けっこう人が多かった。ZEN君が来てないかなと探したけどね。やっぱり好きそうな気がしてました。
たしかに、この叫びは真摯なんだけど、どこか笑えてくるよね。映画にも、そんなぬくもりがあったなー。ただ親子や家族の情緒的な場面は、絶対にイヤだったらしくて、削除を要求。そのために1年ほど上映が遅れたそうだけれど、結局、何も変わってないんだって。
投稿: かりもん | 2011年1月30日 (日) 01:06