『大津 国宝への旅』展
昼から、大津市歴史博物館に出かけた。
大津市歴史博物館の開館20周年記念の企画展で「大津 国宝への旅」をやっているのだ。今月の23日までなので、今日しかチャンスはなさそうだ。大会前だが、思い切って出かけたて、よかった。充実した展示で見応えがあった。
http://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/news/1002.html
大津市ゆかりの仏教美術の文化財が、国宝35点、重要文化財55点を含めて(ただし、前期・後期で展示替えがあるので、すべては見られないが)、粒揃いの名宝が展示されて、壮観だった。
実は、滋賀県は、(国立博物館の東京を除く)京都府や奈良県についで、国宝が多数ある歴史的文化県なのだ。特に、比叡山や三井寺を有する大津市内には、京都市や奈良市についで、多くの名品があるのだが、残念ながら、両都市ほどの知名度はない。だから、今回の展示でもゆっくりと鑑賞することができた。もし、同じ規模のものが、京都や奈良の国立博物館であったら、長蛇の列なるだろう。
これまで、ぼくもこんなところに博物館があることすら、知らなかった。京都からも近くて、駐車場も無料なのは有り難かった。琵琶湖を見下ろすロケーションもよかったし、紅葉も美しくなってきた。これからが見頃だ。
仏像、仏画、高僧肖像、経典や古文書類や仏具、絵画にしても、寺院の縁起や襖絵なので、ほとんどすべてが仏教美術に関するものばかりだ。地域柄、比叡山と、三井寺のものが多く、天台系や、天台真盛宗の西教寺(昔は、ここの会館でよく仏青大会を開いた)の宝物も多かったが、鎌倉以降は、浄土教の展示が俄然増える。阿弥陀像や来迎図、中には善導様の木造もあった。
右上の写真は、延暦寺の四天王像のひとつだか、重量感のある写実的な描写で、なかなかリアルなのに、足元に踏まれる邪気(天の邪鬼)がマンガチックで、その対比がとても面白かった。これって、まさに仏法に接する私達の姿じゃないかなー。どこかで、舌をだして、茶化しているのだもんな。この対比は、人ごととは思えず拝見。
また、今回は、秘仏開閉ということで、(後期は)三井寺の中興の祖である智証大師(円珍)座像がお出ましになっていた。御骨の像と言われるのは、像内に上人のお骨が奉納されているからだ。頭部を面長に、卵のような顔だちはかなり特色があるが、細い目は、瞑想状態におられる。ポスターの写真になっていたものは、もう一つの秘仏の大師像だが、ともに国宝に指定されている。
さて、今回の目的のひとつは、「六道の世界」と題した後期の展示で、聖衆来迎寺にある絹本着色六道絵を拝ませてもらいたかったからだ。
国宝の15幅の内、畜生図と、阿修羅図を除く、13幅が揃って展示される。15幅のうち12幅は、『往生要集』一章「厭離穢土」に示される六道の様相を具象化したもの。六道のうち、「地獄」は、八大地獄の内、等活、黒縄、衆合、阿鼻の四つを、「人」は、不浄・苦(四苦と八苦)・無常の姿を四幅に描かれている。あとは、餓鬼、畜生、修羅、天上である。残り3幅のうち2幅は『往生要集』七章「念仏利益」の所説に基づいて、念仏の功徳を解きあかしている。
最初の1幅だけが、『往生要集』にはない閻魔庁の裁きの場面だ。それでも、業鏡(浄玻璃の鏡)の前に、罪人の罪状がすべて映し出され、恐怖に引きつっている。
「活、活」との獄卒の掛け声とともに、何度も何度も生き返って、無限に苦しみを受け続ける等活地獄や、黒縄で印を付けられ切り刻まれる黒縄地獄、そして邪淫の罪のリアルさが示される衆合地獄など、これまで子供大会のスライドで観たきた世界だ。
阿鼻地獄では、二千年もの間、真っ暗闇の孤独な世界で、頭下足上と、真っ逆様にひたすら落ち続けていく姿が描かれていた。色調は真っ赤炎に包まれていて、前の3つの地獄のようなリアルさはない分、精神的なおそろしさが滲み出ている。三悪道の悪道の世界のあとで、人間界の四苦の苦しみを観たが、まるで楽しい穏やかな世界に見えるから不思議だった。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 『居酒屋夢子・1961』(2022.11.16)
- 大須演芸場での「釈迦内柩唄」(2022.09.22)
- 「ブッダのお弟子さんたち」展(2022.06.17)
- 「最澄と天台宗のすべて」~伝教大師1200年大遠忌記念~(2022.06.01)
- 国宝、聖林寺十一面観音展(2022.03.14)
コメント