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『チョコラ!』

 京都みなみ会館で、『チョコラ!』を観る。先日、ここでも紹介した、『バオバブの記憶』http://karimon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-7180.html同様、日本人監督による、アフリカを舞台にした、子供たちが主役のドキュメンタリーだ。

 またまた知らない世界だ。しかし、これもまた現実の世界そのものである。

Topimage  アフリカ東部に位置するケニア共和国。首都ナイロビから内陸にはいった人口10万余の地方都市が、主な舞台だ。ここで、工場からでる鉄くずやプラスチックを拾い集めて、生活の糧を得ている路上生活の子どもたち(ストリートチルドレン)が主人だ。その仕事から、現地のスワヒリ語で「拾う」を意味する「チョコラ」と蔑称されているらしい。

 驚いたことに、彼らの多くが両親に死別した孤児ばかりではないことだ。大方がスラム街に住むシングルマザーの子だっり、両親のもとを家出しているものもいる。親たちに共通していることは、貧困に喘ぎ、教育の機会もなく、そして驚くほどの子沢山ということだ。ひとり、ふたりが家出しようが、かまっていることは出来ないといった風情だ。彼らは、正しい避妊の知識もないのかもしれない。HIVの問題も深刻だ。感染した若いシングルマザーが登場する。子供もまだ小さい。もしも彼女に何かあったら、子供たちはストリートチルドレンとして、自活し生きのびるしかない。

 劣悪な生活環境の中で、子供たちは寄り添いながら、たくましく生きている。ゴミを集めたり、物乞いをしながら、助け合って生きているのだ。小さい子が、タバコを吸い、シンナーや麻薬を常習している。周りには、さまざまな暴力や危険が待っている。アフリカとはいえ、標高が1500Mもあるので、路上での寝泊まりはかなり寒そうだ。ビニール袋を焼きながら暖をとっている。警察も、彼らの味方ではない。犯罪の温床として、子供でも、容赦なく威圧的に取り締まられ、監獄で暴力的に取り調べられている。

 この街に、日本のNGOが、孤児や子供たちを支援し、学校教育のチャンスを援助したりしている。この悲惨な状況下でも、代表の日本人女性の落ち着いた、自然な雰囲気が、とても尊かった。彼らの多くは、一端は、学校に入りながら、長続きせずに、路上生活に戻っているのだが、根気より両親や学校を説得して、なんとか教育の機会と奮闘されている。長年、有料だった小学校が、最近、やっと無償になったが、まだまだ日常の生活の糧を稼ぐことが、優先されるであろう。それほど、みな貧しいのだ。

 こう書くと、なんとも悲惨な場面が続くよううに思われるが、まったく不思議なことに、意外にも、映画からは、そんな悲壮感や絶望感といったメッセージよりも、もっと豊かなものが感じられてくる。

 むしろ、子供たちのいまを生きているたくましさが、グッーと伝わってくるのだ。そして、とてつもない笑顔! まさに、ビッグスマイルなんだなー。ほんとうに、美しく、かわいい。物質的に最高に贅沢に恵まれた日本の子供たちが、なんとも憂鬱そうで、暗い顔とは対照的だといっていい。

 HIVの母親が、小さな子供たちと一つの灯火を囲み、慎ましく食卓を囲み、そして一つの毛布にくるまれて寝るシーンなど、ほんとうに楽しそうで、温かな幸せが伝わって来る。

 しかし、それは明日がないかもしれない、あまりには脆い幸せではある。

 他にも、ラストの方での子供たちの路上の晩餐のシーンもよかったけど、一方で、退屈でウトウト寝てしまうようなシーンもあった、そんな感じの映画でした。

 おまけ:いい写真がたくさん掲載されていたので、パンフレット(600円)も購入しようとしたら、「同題の岩波のブックレット(700円)のセットもありますが、どちらにしますか? セットなら、1,000円で、300円もお得ですよ」と勧められた。ムムム、300円も得か。それに、岩波のブックレットは悪くないしなー。きっとこれが、100円~200円の割引なら迷わずパンフレットだけにしただろうが、この300円の線がぼくにはツボ。迷って、おもわずセットを購入してしまった。これはよしとしても、ちょっと内容かぶってるのだけど……。

 やれやれ、相変わらずの貧乏性である。

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