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浮浪者

 「お父さん、すぐ来て! 早く、早く」

と、連れ合いの緊迫した声が聞こえる。

 「どうしたの?」と、すぐに部屋から出たら、彼女が、あわてて応接間のドアを施錠している。そして、怖そうな声で、

 「変な人が玄関に入ってるわ。何かくれといっている」

 やれやれ、またか。その時間、たまたま事務所は誰も不在だった。こんな時は、男がでないといけない。

 玄関には、老いた浮浪者が立っていた。上は、ランニングシャツ一枚。

 顔を観るなり、「先生、熊本が出てきました。お金がなくて困ってます。食べてないです。何か恵んでください。お願いします!」と、「先生! 先生、お願いします」と、拝みながら、哀れな目でみている。

 普段、京都駅を根城にしている人たちが、内外国の要人や貴人が駅を利用する前に、一斉に取り締まりが行なわれる時などに、このあたりにまで浮浪者が流れて来ることがあるのだ。特に、ここはお寺なので、「雑用でもなんでもするので、お金がほしい」とか、「何か食べ物を恵んでください」とか、時には、「東北の○○に帰る金がないので、必ず返すので(返ってくることはない)少し用立ててほしい」とか、さまざまな形があるが、とにかく金の無心にくるのだ。ひどいものになると、予め電話で「相談したいことがあります」と予約をいれて、金を借りにきたこともあった(この人は、拘置所をでたばかりの暴力団を名乗って、最後は脅してきた)。それ以上に、二人組の芝居のはいったものもあった。

 どう対応するかは、その都度である。追い返すこともあるし、食べ物を恵むこともある。何がしかのお金をボケットマネーから渡したこともある。ぼくが子供のころには、台所にあげて食事を食べさせたこともあった。

 でも、基本は、静かにお帰りいただく。でも、今回は、たまたま食パンがあったのでそれを渡したら、「エー、あのお金は」と言った。もうこの時点で、ダメ。どうせ、呑み代か、パチンコなどに消えるのは分かりきっている。きつく叱って、追い返した。この人、たぶん、二度目なんじゃないかなー。

 それにいまは、インドで、哀れな物乞いにひつこくつきまとわれた。いっそうの哀れみを請うために、子供の時に親に指などを切っている者も多い。ほんもの(?)というか、プロというのか、そこまで徹底した人をたくさんみてきたので、やっぱり、これもただ哀れみだけではなく、何かこちらが出したくなるだけのサムシング・エルス(Something Else)がほしいものだと思った。その意味では、今日の人は、いま一つ勉強不足か。

   いずれによせ、強く追い返しても、また何がしかのお金を与えても、勝手に入ってこられた薄気味わるいのと、そして、いつまでも後味が悪さが伴うわのは、事実だなー。

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