『バオバブの記憶』
いよいよ仏の子供大会が近づいてきた。今日も準備会。和讃の編集作業など、今月きりの仕事もいろいろある。かなり忙しのだが、こんな時こそ、時間をうまく使って映画観賞だ。今週は、モーニングに、レイト(夜)にと、ドキュメンタリー映画を4本観る予定。簡単でもいいので、4本とも紹介してみたい。
まずは、1本目は京都シネマで見た『バオバブの記憶』。日本人監督の日本映画である。西アフリカのセネガルのある平凡な村が舞台だ。こんな映画みると、西アジアや東欧のことも知らないなが、アフリカのことは、ますますほとんど知らないなー、と実感。セネガルと聞いて、何を思い出せますか? 首都はダカール。あ、これなら聞いたことがある。パリ~ダカールラリーの終着点。つまりはサラハ砂漠の西端ということか。隣国のマリから独立した共和国だが、フランスの支配を受けてきた。フランス語圏ということで、パリ・ダカのゴールも納得。ところで、フランス映画を見ていると、しばしばアルジェリア戦争のことが、現代のフランスのトラウマ的な事件として、大きな影を落としているのがよくわかる。そのもの自体を扱った映画だけてなく、その端々に独立戦争の傷跡が出て来ることが多くて、近代のフランス映画の背景としては、重要ポイントのひとつ。そうそう、サッカー好きの人なら、まだ記憶にあるだろう、例のジダン選手の頭突き事件にも、この関係の影が覆っているのである。イギリスとフランスは、縦断政策と横断政策(ああ、懐かしい!)で、アフリカの覇権を争っていた両国だったが、結局、1960年代になって、次々と植民地が独立していく中で、最後までフランスが執着したのが、アルジェリアである。これには、理由があるのでが、この手の映画(『いのちの戦場』~アルジェリア1959~)も最近、見たので、機会があればまた触れることになるだろう。
この映画の話題からは、完全に横道にそれた。
これは、バオバブという大樹と、その樹を中心にした、昔ながらの素朴な村人の生活を、淡々と描いたドキュメンタリーだ。品のいいNHK教育TVの紀行番組みたいで、退屈といえばかなり退屈な内容。よく寝むれたといえば、よく寝たて、リフレッシュできたぞー。
何も大事件は起こらない。セネガルの田舎の村に住む、一般的的な家庭の12歳の少年を主人公に、バオバブという大木に見守られた伝統的な日常生活を、淡々と描かれているだけだからだ。珍しい生活といえば、日本人には、知らないことばかりである。たとえば、彼は、何十人もの大家族の一員だが、父には二人の妻と、そのそれぞれの子供たちと同居しているのだ。おお、いまだに一夫多妻制か。妻が二人いるなんて、なんかうらやましいぞー。でもなー。ぼくなど、ひとりの妻でも手を焼いているのに、これが二重になると考えると、なんか不吉で、おそろしいぞー。ああ、これもかなり余談か。
少年は、貴重な男働き手として、毎日、農作業や牛追いを手伝いをしながら、コーラン学校という近所の学校に通っている。しかし、同じ兄弟でも、女の子たちは、公立のフランス語学校で勉強しているのだ。彼も、ほんとうはそのフランス語学校に行きたいのだが、その気持ちを、なかなか父親に伝えられずに悶々と暮らしいるのだ。
そして彼らの暮らしの背景には、いつもどっしりと存在しているのがバオバブの樹なのだ。さまざまな形で、彼らの生活の糧になるだけでなく、信仰の対象として、また病気になると、この樹を拠り所とした祈祷師が頼りになるお国柄である。村人の誰もが、この樹に精霊が宿っていると信じているのだ。セネガルは、イスラム教の国であるが、同時に、このような民間宗教・アニミズムも色濃く残しているようだ。確かに、樹齢1000年ともいわれる、そんな霊的なオーラのある大木である。ちょっと、昔に、日本でもあちちこら(いまもあるが)御神木のようでもあり、同時に、もっともっと生活に密着しているのである。
ところが、そんなセネガルの都市部では、急速な近代化が進でいる。そして、霊木であるバオバブの大木が平気で切り倒され、開発の波が押し寄せているのだ。
「バオバブおじさん。
100年前、ぼくたちはどんな暮らしをしていたの?
500年前、ぼくたちはどんな暮らしをしていたの?
1000年前、ぼくたちはどんな暮らしをしていたの?」
いつから、人間だけが、地球上のいのちの時間を超えて生きるようになったのか?
温かな平和な映像に載せて、そんなメッセージが送られてくる映画たった。
セネガルやバオバオの樹に関しては、リンク先の映画公式サイトで…。これだけでも、相変わらず、知らないことばかりですね。
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