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香木

  先日、インド旅行の参加者のおひとりから、土産物を拝ませてもらった。

 たぶん、今回の旅行で、一番、積極的に旅を楽しまれたお一人で、拝観にしても、買い物にしても、初めからしっかりした目的をもっておられた。

 そのひとつが、彫刻用にするための香木(こうぼく)を入手することであった。

 香木とは、自然に芳香を放つ木材のことで、皆さんがよく聞くのは、沈香(ぢんこう)とか、白檀(びゃくだん)、そして最高級の伽羅(きゃら)などが有名だ。薄片に削ったものを加熱して芳香を楽しむのに用いたり、仏像などの彫刻、扇子や数珠などの材料として用いられる。ただし、白檀と称して、後で香りをつけたバッタものや粗悪品が多いのも現状で、ホンモノは高価だ。

 日本で一番有名な香木は、東大寺正倉院の宝物にある、巨大な「蘭奢待(らんじゃたい=各文字それぞれ「東」「大」「寺」が隠れている)だろう。正倉院には、1メートルを超す巨大な香木が、他にも収納れているのだが、いずれも1200年の時をこえて、類まれな芳香を放っているそうだ。特に、150センチをこえる巨木の「蘭奢待」は、『伊藤先生の言葉』にも触れられているように、各時代の権力者が力の保持の象徴とし切り取っている。室町幕府8代将軍・足利義政、織田信長、そして明治天皇の3人については、付箋でその切り取り跡が明示されている。

Img_5390_2 いまでも、伽羅は、1グラムで金1グラムの価格に相当するといわれる。残念ながら、伽羅ではないが、今回のツアーでも、旅行会社のプランとして、小さな小さな破片を集めたお香用の沈香を、21,000円也で勧められたが、手が出なかった。たぶん、日本での価格より、お安いのだろう。(ちなみに、華光会館では、焼香用に使われるのも沈香で、1両目(15gぐらいか)で、8,000円程度の、極上のタニ沈香という上質のものを買っています)

 しかも、写真のようなまとまったものを、いまの日本ではなかなか入手が困難だ。ネットで検索しても、手を引いている業者もあるほどで、すべて要見積り、時価で販売されるほどの貴重品。一瞥すれば、そこらに落ちている木切れとなんら代わりがない代物にみえるが、さてさて、お値段は?

 詳しく聞いたが秘密…。インド旅行代金が安く思える程度だったとは、お伝えしておこう。それでも、国内の時価の1/4、1/5以下だそうだ。値打ちを充分にわかり、目が利く人だからできる買い物である。

 ところで、この名人は、以前、ウン百万円(こちらもビックリ)もする香木を材料に、不動明王の彫刻の依頼を受けたそうである。誰もビビッて(失敗したら、同じ材料は手に入らない)辞退されたそうだ。なんでも、20㎝ほどのものが、完成後、立派な厨子に入り、東京のデパートに並ぶと、二倍以上の価格がついて(ハイクラスのベンツが買える)売りだされたら、即完売したというのである。バブル全盛期のころのお話。けっして、彫刻家の本人の懐に入るわけではないが、庶民の感覚ではわからない。

 さて、この香木で根付などの作品を造られるそうだが、当然、削りカス(カスでも、クズでもないが)が出る。大事に集められるそうなので、それImg_5389 をお香用にいただけるそうである。まあ、この程度が、スモールシンにはピッタリかもしれないなー。

 さて、写真の仏像もたいしたもの。わざと古くした新しい3つはともかく、右下の涅槃像はかなりの年代物と見た。重量感もタップリあり、異様に重い。別ルートでの買い物で、これひとつでぼくの総土産代金に匹敵するようだ。

 なんともかんとも、何事もお金に換算しないと、値打ちがわからないというのも、悲しい話ですが……。

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コメント

香木の写真を画面一杯に大きくしても、香りが伝わって来ない(当然ですが)のが残念!!
「名人」と言うことで何となく距離をおいていましたが、インド旅行後は(旅行中も)、特にお話をした訳でもないのに、別名「弟君(おとうとぎみ)」とも呼ばれ、とても親しみを感じるようになりました。これもインド旅行の嬉しいご縁の一つです。

投稿: チャン | 2009年3月13日 (金) 07:13

チャンさん。皆さんよりも、はるばる何カ国も超えての天竺入れでしたね。お疲れさまでした。
 バスに揺られ、かなり苦労したハードな巡礼という気分ですが、実は、高級ホテルに泊まり、レストランで食事をし、添乗員にお世話してもらって、何重に守られた優雅な旅だったでした。それでも、こ一緒に仏跡の旅をした皆さんが、いとおしく、有り難く思えてきます。
 弟君も、それはそれは喜ばれていて、終始にこやか。懇親会でも、遅くまで話が弾みましたよ。

投稿: かりもん | 2009年3月13日 (金) 23:06

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