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『40歳問題』

  レイトショー(深夜からの映画)で、『40歳問題』を観た。中江監督の前作の『恋しくて』 (BEGIN原作で、イカ天もでてくる少し自伝的な音楽映画)が、ぼくにはいまいち感(沖縄音楽のところはよかった)が強かったので、ぎりぎりまで迷った。でも、そんな時は進めの原則で見に行くと、予想以上に面白かって得した気分になる。同世代(40代前半が中心だけれど)で、クリエイティブな活動をする人たちの、いまが聞けて、なにか自分を問われたり、投影されている気がしたからだ。

40sai  40代の人は、ちょうど1960年の高度成長期に突入する時代から誕生し(2月23日生まれの皇太子がまさにそうだ)、大半が80年代後半のバブル期に社会人になった世代である。当然、景気のよい時代だったので採用も多くて、現代では余剰、過剰人員となっているところもある。しかし正規採用なので、経費が掛かる割に、簡単に首切りが出来ず、結局、派遣や非正規の若手がワリを食らっていたのだか、とうとうこの中堅層にも不況の嵐が押し寄せてくるかもしれないというのが、いまの社会問題にもなりつつある。

 でも、この映画に登場するのは、そんな一般のサラリーマンではなく、リリー・フランキー、作家の角田光代、元おにゃんこの新田恵利、格闘家の小川直也、女優の洞口依子など、今日までクリエイティブな活動を続ける、各界の40代が登場して、40歳になった自己とその活動についてコメントしている。

 ただし、それはあくまで刺し身のつま。中心は、3人の40歳前半のミュージシャンが、エンカウンター的な、半ば強制的なコラボレーションで、オリジナル曲を作るというものだ。「エンカウンター」と言ったのは、ぼく自身がそう感じたので、既成の安定調和の自分でも、十分に対応できるだけの経験と実績がある3人だが、それでは3人が出会う意味がない。どれだけ、日常の「毛皮を脱いで」(大沢の言葉)、裸の一個の人として出会い、その混沌とした中で、創造できるものが、あるのかないのか。曲の結果よりも、そのプロセスが、ぼくにはエンカウンター・グループに似ていて面白いと思ったのだ。

 バブル絶頂期の80年代終わりからのイカ天とか、ホコ天なとのバンドブームがおこった。ちょうど華光会でも、この世代の人達の音楽好きは有名だけれども、女の子にもてたければ、猫も杓子もとりあえずバンドという時代があった。イカ天出身のBEGINがちょっと顔を出すが、
 主役のひとりフライングキッズの浜崎貴志もその代表格のひとりだ。
 そして、真心プラザーズの桜井秀俊と、
 大津出身で関西弁でヅバヅバと言いたい放題の大沢伸一という3名の40代(アラフォー世代)が、「40代のいまをテーマにした音楽を作れ」という映画企画のオファーを受け、共同作業を行なうその製作プロセスを追いながら、実はその生きざまを追いかけるドキュメンタリーだ。曲づくりはあくまできっかけで、音楽という共通の言語をもちながらも、性格も、生活も、指向も違う3人の、日常生活や内面にもカメラは入っていく。40代としての悩み、表現者としてのこだわりなどが垣間見れて面白い。特に、安定調和でまとまりそうになった世界を、常に破壊していこうとするとんがった大沢伸一と、どんな無理難題にも、好々爺のように受け止める真心の桜井秀俊の丸みのある感覚の対比が、曲づくりだけでなく、お互いの私生活とあいまって、同じ40歳代で括っみると面白く感じられた。

 残りの二人と異なり、桜井だけは、平和そうな、どこにでもあるごくごく平凡な家族の風景の中にいる。閑静な郊外の一戸建てでおしめをかえ、ベビーカーを押し、小さなユニットバスで子供を風呂に入り、一家団欒で楽しい食事し、テレビを見ながらビールを飲む…。一般的には、破天荒なイメージが先攻する芸術家やミュージシャンだが、現実はかなり違う。でも、なんか自分の姿を見ているようで、ここまで私生活をさらされるとちょっとこっばずかしい感もある。

 撮影当時、47歳だった中江が、途中で語っている。今回の映画の企画に際して、「両親が生きている間は、自分は死んではいけないと思っていたが、その親が共に死に、自由に生き死にできる身になった」という言葉が、40歳問題のひとつの象徴なのかもしれない。

 親の介護や子育て、そして仕事も家庭生活も厳しい現状の中で汲々とした生活を送らざるえないのが、いまの40代である。もう夢を追うには、現実と向かい合いすぎているのかもしれない。しかし、今後はその介護や子育てから解放される年を迎えていく。その時になって、果たして既成化した、ルーティーと化した日常生活を、つまりは、いまの安定調和にある自分自身をぶち壊してまで、生まれ変わっていくことができるのだろうか? 

 そして、完成した曲が、「LOST CONTROL」というのだから、かなりできすぎの話だ。

 それでも、エンカウンターのプロセスの面白さを感じていると、深夜の閑散とした劇場の中で、「で、結局、お前は、これから何を創造していきたいのか」と、画面を見ながら自問自答しているぼくがいた。

  追伸:翌日には、さっそく真心ブラザーズのCDを購入するのでした。

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