『グー、グーだって猫である』と、『ネコナデ』と、番外の『ミリキタニの猫』
今月は、ネコが主役級の映画を続けてみた。小泉今日子の『グー、グーだって猫である』 と、大杉 漣の『ネコナデ』だ。複雑な人間関係に疲弊した現代人は、ますますペットに癒され、慰めれるという面があるだろう。信用できるのは、動物(ペット)だけという、かなりお寒い世相を反映しているかもしれない。そうそう、映画自体も、観ても観なくてもお好きなようにという映画で、犬好きという人もあるけれど、なんとなく癒し系はネコじ
ゃなくっつちゃという、ネコ派の方はどうぞ。映画のチラシをあげたら、 ネコにまっしぐらのTさんが、事務所にペタペタと貼っている。
あくまでぼくの好みだが、『グー、グーだって猫である」は、久しぶりに金返せッて感じの映画。せっかく犬童監督なのに…。なにが嫌って、これだけスボンサーを露骨に画面に登場させちゃー、白けますよ。金を払って観てるわけですから。最初から、TV用に作っているのなら、観衆をバカにしいる。それに比べれば、まだ『ネコナデ』のほうが共感する面があった。
ほんとうは、自分のキャラクターも、けっこうさまざまな面があり、多様性があるし、環境や立場が変わると、いろいろな面が出るのが人間だ。でも、どこかで、終始一貫している自分というのがあると思いたいのだ。自分のキャラと合わないところ(実は、会社でも家庭でも厳格な上司であり、父である人が、実は優しい、涙もろい弱い一面をあわせもっていると)あまり見せたくない。男性、特に中年の社会的な地位のある人ほど、妙なプライドがあって、けっこう心境はややこしい。そんなツボを映画はついていた。確かに、立場に関係なく、その人のもつ本質的は、常にディテールに現れるのは事実だ。でも、それとても、ある種造られたもの。その意味では、ある程度、一貫した自分というのもあるのも事実だけれど、さまざまな多様的な面、ネガティブなイメージも含めて、その、いま、起こっているところに柔軟であるほうが、人生を豊かなに見ることが出来るのじゃないかなー。
まあ、そんなことを思った。
昨秋の映画で、生きた猫が主役ではないけれど、『ミリキタニの猫』は、示唆にとんだドキュメンターだった。これはぼくと波長の合う人(そんな物好きはおらんか)には、オススメ。
NY在住の日系の路上アーティストの頑固さと、権力への反骨精神が潔い。いまは、「長いものには巻かれろ」、「空気を読んで多数派につけ」という風潮が強くて、ある意味、それが上手な人が、コミニケーション能力にある人のような錯覚さえ起きている。
その視点からいえば、ミリキタニさんは、空気の読めない困ったさん。アーティストといえば聞こえはいいが、要するに高齢の頑固なホームレス。彼は、9、11の混乱の真っ最中でも、身の危険に無頓着に、いつも同様、路上で絵を描いている。そんな彼に、関心をもった女流監督との絆、愛情から生まれた映画だ。彼は、カリィフォルニアはサクラメントの出身で、父の故郷の広島で幼少期を過ごすが、時まさに戦争突入前夜。軍国主義に嫌気が差して、米国に戻るが、彼に待っていたのは、日本人としての強制収容所送りと、そして故郷への原爆の投下だ。二つの祖国と人種差別、激動の戦争の世紀に生きた彼のアイデンティティとは?そして国家とは、また家族とは? 強制収容所への旅は、静かながらも、なかなか感動。隣にいると、きっと困ったさんでしょうが、とても魅力的で、偉大な反骨のアーティストですね。題名の猫は、彼の得意な素材。
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コメント
お久しぶりです。
永代経法要初日にお邪魔した者です。
覚えておられますでしょうか?
ブログいつも拝見しております。
私も映画が好きで、月に一本は見ます。
かりもん先生の映画評論も、よく見ます。
ただ、かりもん先生とはジャンルが違うみたいです。
私は主にSFX物、サスペンスが好きで、社会派的な物は「半落ち」等を見ます。
「靖国神社」は、話題作なので見ました。
今度の華光大会2日目に、参詣させて頂きます。
宜しくお願い致します。
投稿: 淀川コナン | 2008年10月30日 (木) 21:08
さきほどトラックバックを送信させていただきましたが、誤って他の日記「波乗りレストラン」から送信してしまいました。
こちらから削除することはできないようなので、削除をお願いしてもよろしいですか?お手数おかけして申し訳ございません。
投稿: こぶたのマーチ | 2008年11月11日 (火) 11:06
こぶたのマーチ さん、はじめまして。わざわざお知らせくだりありがとう。無関係のTBの方は、削除しておきました。「君のために千回でも」も、いい映画でしたよ。
投稿: かりもん | 2008年11月11日 (火) 17:38
どうもありがとうございました!
お手数おかけしてすみませんでした。
「君のためなら」観られましたか?!
私はDVDレンタルしようと思ってますが、まず原作本を読みました。今年読んだ本の中でベスト1でしたよ。
投稿: こぶたのマーチ | 2008年11月11日 (火) 18:00