聴聞は具体的に
今月も、伝道研究会で、羽栗行道先生の『心身の革命』を読んだ。残念ながら、とうに一般では入手できないが、罪悪観について、詳細で具体的なお示しがある。『子供の聖典』にも図表が引用される「罪悪のめあて」のところだ。ご恩で飾られた悪心煩悩の私が、いかに罪を造っていくのかが、極めて具体的に、きめ細かくご指南くださっている。それには、外面の飾られた、文化や教育の教養心ではなく、自己本意で、損得だけの真っ暗な感情の固まりの内面に、真実の光りを当てて観なくてはわからない。死ぬまで離れられない生活の上での十種類、すなわち、衣・食・住・金銭・名誉・知識・財産・妻子眷属(家族)・生命・娯楽に分類して、またそれぞれが、得意(積極的な面)と、不得意(消極的な面)とに分けて考えていくのである。
たとえば、一例の衣服にひとつでも、単に「服で欲を起こす」と簡単に括らないで、具体的に考えていく。どんなものがあるか。普段着、一寸出、よそ行き、流行物、式服に、それぞれ合い物、夏物、冬物があり、生地に、色合いに、形に、サイズに、そしてブランドにこだわり、そこに、洋服や着物があり、付随の、帽子、靴、アクセサリー、下着に、寝間着、さらに寝具にまでこだわるなどなどが加わり増す。それが、幼年期、少年期、青年、中年、老年と、どんどん変化してやまず、それぞれに積極的(思い通りになって造る罪)、消極的(不本意で造る罪。お気に入りが汚れたとか、高くて手に入らないとか、嫌なひとが同じものを来ていたとか、高価で買ったものがパーゲンで半額になったか)に造る罪がある。それを具体的に考えていくと、衣装ひとつだけでも、これまでにどれだけの罪を造ってきたは計り知れないのだ。このように、この10種類だけでも、積極、消極で、日夜、瞬間瞬間に、数々の罪業を作り通しなのである。
伊藤康善先生が、「仏法は具体的に聞け」と常々仰っていたことが、『伊藤先生の言葉』の中に示されている。そのなかに、「無常観、罪悪観の実修」という項目がある。
「ラッキョの皮をむくように、毎日、一皮一皮、自分の心をむいてゆけ。ごまかさず、ありのままにむいていけ。一日一日の無常を観てゆき、親子兄弟、夫婦、隣近所の人々、勤め先の人々に対して、毎日、どんな心で接している自分なのか。ごまかすことなく、自分の心を観ていくことが大切だ。
たえず、無常観、罪悪観を実修していくこと。これをはずしたら、仏法の求道はありませんぜ。(略)
たたかれても、けられても、執念深く仏法にかじりついてゆけ。(略)
毎朝仏壇を拝み、お給仕をしてゆく美しい心を観てゆくのではなく、その反対に、下へ下へ、自分の地獄行きの姿を観てゆく。それには、毎日、どれだけの罪を作っている自分であるかを、観てゆくことですわー。(略)
信心を得ように、手をかけなさるなー。「こうして求めてゆけば、信心が得られる」と心得るのではなく、ただ、地獄行きの自分を観てゆく。信心が喜べるか、喜べんかは、如来様のお仕事だ。凡人が、手をかける仕事ではない。」
まあ、今度の華光大会でも、どんなに聴聞を熱心で、「今回こそド真剣に、命懸けで聞こう」と凡夫が決めても、まず聞けやしない。法座の最中の心境のときに無常がやってくるのではなく、日常生活の凡夫の生地の上に、罪悪も、無常もあるのだから、そこのありのままを問題にしていかないと、地獄行きの姿も、如来のご本願も遠くかすむばかりである。
| 固定リンク
「法味・随想」カテゴリの記事
- 修正会(2)~地震~(2024.01.03)
- 今日はご示談(2022.11.25)
- 神鍋高原・八反瀧(2022.11.06)
- 納骨法要(2022.10.29)
- 法に追い立てられる幸せ(2022.05.29)
コメント
ありがとうございます。『街』(高石友也とナターシャセブン)はよく歌ってましたね。かりもん師が覚えていて下さり感激です。昨夜、娘とお風呂に入りました。その時鼻歌交じりにこの歌“この街が好きさ君がいるから この街が好きさ君の微笑みあるから”を口ずさんでいました。不思議ですね。その夜、師のブログで紹介されていましたから。ところで今回の「聴聞は具体的に」は、信前信後を問わず大切なことですね。つい“分かっちゃいるけど”と言い訳けする私をみせられます。先月のG先生法話資料で三戸独笑師『ないないづくし』をいいただきました。欲しい、なりたいと求める姿、もーういいやと自分で諦めを悟ったような行為、何れも私の手の内での無常観・罪悪観。真実は、聞かせていただいて、育てていただいて信知させていただくですね。積もる垢の多いことか、早いことか。独笑師『ないないづくし』(57~62)「無いかとさがせば大ありりで、万難辛苦の大犠牲、無量の血潮が流れおる、よくぞここまでお育てと、ご恩知らずと懺悔せば、中より飛び出す南無阿弥陀仏」と、如来さんのひとり働きであると信知させていただきます。明日からの華光大会ではお世話になります。よろしくお願いをします。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
投稿: 稜 | 2008年10月31日 (金) 11:34
淀川コナンさん>お久しぶりですね。自身の後生の大事ですからね。どうぞ、お参りください。。
稜さん>尊いお示しありがとうごさいます。
明日からが楽しみですね。この世のことは、ほんとうにいろいろあって、凹気味だすが、この3日間は、百重千重のお念仏のご縁に遇わせていただくことが楽しみです。待ち遠しい!
投稿: かりもん | 2008年11月 1日 (土) 00:25