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『クライマーズ・ハイ』

  8月12日。新聞は、北京オリンピック一色である。国際面のロシアとグルジアの軍事衝突も、なんとなく端に追いやられている。

 三面にほんとうに小さく、御巣鷹山23回忌の慰霊の記事が出ていた。たぶん、この映画を観ていなかったら、この記事を見逃していただろう。
 当時のことは覚えている。夕食時、テレビ速報が流れ、報道が二転三転して、思わずテレビの前に釘付けになった1985年8月12日。日本航空墜落事故は、単独では、航空機事故史上最悪の大惨事で、ハイテク、安全神話の崩壊を予感させる衝撃の事件だった。20数年で風化するのは早すぎる大惨事だが、その後、大事件や大災害が後を絶たず、色褪せるスピードが早いことは、ちょっとおそろしい。

D8b39e16a06235ee040f906f96b2baa0  『クライマーズ・ハイ』とは、登山時に、興奮状態が極限まで達して、恐怖感が麻痺してしまう状態を言うが、本作は、社会派ドラマ、人間ドラマの暑苦しい(?)秀作だ。80年代って、こんなに熱かったのかなー。原作は、作家・横山秀夫氏が、上毛新聞記者時代の日航機墜落事故取材の実体験を小説化したものだ

 群馬県の地方紙に、何十年に一度の大事故の一報が飛び込む。大久保清事件、72年のあさま山荘以来の大事件に、新聞社内は一挙にヒートアップする。しかし、520名の犠牲者を出した、現場はその想像をはるかに超えた惨状だ。それを、いかに制約された時間内に、記事にし、印刷し、配信していくのか。毎夜、毎夜が、文字通り心身をかけての試練が続く。時には、社内で、ヤクザまがいの怒号を飛び交い、感情むき出しに個人や部署間の対立が起こる。先輩後輩の確執、男のいやらしい嫉妬が渦巻く。さらには、資金も人力でも劣る一地方紙が、全国紙を出し抜けるかという男のプライド、意地もある。主人公役の遊軍記者、堤真一が熱く立ち向かった1週間の、まさに熱病ようなクライマーズハイ状態を映画化している。

 でも、たった20数年。ずいぶん、時代は変わった。通信手段の最先端が、自動車電話や無線機の時代だった。命懸けで、現場にはいった堺雅人(いい味だしてます)が、なんとか時間内に入稿しようと、必死に民家の固定電話を探し回るシーンに、時代を感じた。ケイタイも、ネットも、パソコンも普及してなかったんだ。その意味では、テレビにその速報性や臨場感を抜かれ、いまやそのテレビも、ネット報道にその地位を奪われている。いまだに、限られた時間内の報道という使命を帯ながら、日刊紙は何を伝えて行くのだろうか。そんなことを考えながら観るのも一興かも…。まあ、社会や会社などの組織の中で働く男性向き。2時間半が、テンポよく、かなり血が騷ぐんじゃないかとなーとお勧めです。

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