『おいしいコーヒーの真実』
「食の安全性、エコ、グローバリゼーション。『いのちの食べかた』『ダーウィンの悪魔』に続く、日常からあなたの知らない世界を知るドキュメンタリー」と、『おいしいコーヒーの真実』の映画チラシにあった。石油につぐ、世界で第2位の超巨大な貿易商品であるコーヒー豆を通じて、フェアトレードの重要性を取り上げたドキュメンター映画。これは! かなり期待して、みちママさんと待ち合わせて、みなみ会館へ。
ぼくに期待しすぎ感が強すぎたか、正直、啓発的なメッセージが中心で、少し面白みに欠けていた。コーヒー市場を牛耳る多国籍巨大企業へのつっこみがなく、「取材を拒否された」のテロップで終わっている。たとえそうでも、その拒否されたプロセスから見えてくるものもあっただろう。それと、肝心なところは、テロップ(字幕)で説明中心だが、もう少し何か映像が欲しいところ。そして、その啓発された問題の、その先が知りたいと思うころで映画は終わる。要は、先進国のひとりひとりの消費行動によって、発展途上国との不公平な経済格差、そして深刻な貧困にストップがかかるという趣旨だが、具体的に、消費者が、巨大企業へどのような圧力をかけることで、フェアトレードの商品に変わるのかなどの実例も欲しかった。
とはいっても、私達が享受している快適な日常生活と切り離せない、重要な問題を取り上げていることには変わりがない。いま、日本も格差社会といわれているが、世界規模で見るなら、先進国と発展途上国(特に資源をもたないアフリカ諸国)との間の、経済格差ほど激しいものはない。別に、バイクやラジオなどの贅沢品を求めているのではない。せめて、子供たちに最低限の生活のための食事と、安全な水を確保するだけの、飢餓から救われるだけの正当な収入を求めたり、何時間にも及ぶ過酷な労働に対する対価の支払を求めているにすきない。映画では、その貧困に苦しむエチオピアの農民を救うために戦う現地の農協連合会の代表の奮闘を通じて、メジャーが牛耳り、不公平なコーヒー取引の実体を浮き彫りにしているのである。
トールサイズのコーヒー1杯330円の内訳は、
「カフェ、小売、輸入業者」取り分 297円(90%)
「輸出業者・地元の貿易会社」取り分 23円(7%)
「コーヒー農家」取り分 3~9円(1~3%) !
しかも、コーヒー豆の暴落のしわ寄せは、末端の農家だけが受ける仕組みになており、しかたなく、不法植物の栽培に手を染める農民も増えているのだという。
これはコーヒー豆だけではない。「自由貿易」というと、とても聞こえはいいが、実際は、先進国や巨大多国籍企業に利をもたらす構造にもなっている。画面には、新多角的貿易交渉、つまり、世界貿易機関(WTO)加盟国による、農産品、工業品の貿易自由化、サービス、途上国問題なども扱う通商交渉が、2003年9月のメキシコでの閣僚会議が決裂した様子が描かれている。真の貿易の自由化、自国の農業保護といった難しい問題もあるが、ここには環境問題にも通じる構造があり、特定の先進国が、自国の利権やエゴを剥きだしに、途上国に決裂の責任を押しつける非難合戦の場になっていた。
確かに、このところ「フェアトレード」(公正貿易)という言葉も認知されつつあり、フェアトレード商品を見かけることも増えてきたが、まだまだ一般の認知度は充分とは言い難い。まずは、その実体を知ることからだ。年間、800億ドル!以上と言われ、莫大な利益をもたらす強大なコーヒー豆の取引。その一方で、生産農民の深刻な生活難や飢餓が助長されている事実を、コーヒーを飲む度に思い出し、自分の頭で考えることから始めないとなー。
せっかくなので、映画で取り上げられていたスタバでお茶しました。
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