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『王妃の紋章』

 開幕前から、スボーツの領域を超えて、政治、外交、経済、人権問題や環境問題と、さまざまな話題や批判の絶えない北京オリンピック。その一つの象徴が、「これでもか、これでもか」の人、金、物を総動員したあの派手な開会式セレモニーだ。他国のやっかみや嫉妬もあってか、さまざまな疑惑が取り上げられて、いまだに姦しい。

 ぼくは、ああ、やっぱりチャン・イーモウだなーと思った。好き嫌いは別にして、最近の彼の映画を見ていると、今回の演出も驚くことはない。人情的な映画もうまい監督で、誰が名付けたか、幸せ三部作といわれる作品が好きだ。時に、チャン・ツィィーの初々しさもあって、ある種のユートピアのような『初恋の来た道』の暖かさがいい。ある一家の家族史を通して中国の激動の現代史を描いた『生きる』も忘れがたい名作。もちろん、初期の、コン・リーの出世作『紅いコーリャン』や『紅夢』も好きで、「紅」というタイトルが象徴するように、鮮やかで色彩が豊かな映像が特色でもある。

Golden_flower  そして、今春、『HERO』『LOVERS』に続く、『王妃の紋章』が公開された。CGも驅使しているのだろうが、これでもか、これでもかというほどの人海戦術と、300万本といわれる菊の華、そして黄金に光り輝く宮殿と、超豪華な衣装…。正直、ここまでやるかと感心する以外はないけれど、なにか腑に落ちなさもある超豪華絢爛のスペクタクル巨編だ。要は、マクベスのように、王族内の葛藤を描いている中国の古典が下敷きにある。夫と妻、父と息子という王族一家の愛憎劇や孤独を、いまや国際的大スターのコン・リーやチョー・ユンファの豪華な顔ぶれが、揃い踏みして描いている。

 その意味では、興行的にはすごいけれど、最近のハリウッド路線はどうなのかなと思いながらも、やっぱり彼の作品は見ずにはおれないし、劇場の大スクリーンでその映像美も堪能するには一見の価値はある。でも、50億もの巨額を投じ、大スターが揃い、超豪華な衣装や美術、すこいアクションに、愛憎劇にと見どころ盛り沢山なのに、見終わっても、その豪華絢爛な印象以外は、なにも残らず、心に響いてくるものはない。あ、これって、開会式のセレモーと同じかもしれんなーと思った。

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