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『歩いても 歩いても』

 京都シネマへ。3スクリーンがあるが、けっして大きくないミニシアター劇場だ。でも、このところ上映される邦画は、どれも立ち見がでるほどの人気。『歩いても 歩いても』は、『誰も知らない』の是枝裕和監督最新作だ。ある家族の夏の一日を描いた、ほろ苦く、痛烈で、時にユーモラスな、心温まるホームドラマだった。
 満席の劇場は、左右の通路にも立ち見客が出ていた。朝から二本続けて鑑賞なので、いい席を確保できた。映画が始まり、40、50分経ったころだろうか。突然、「ブッツン」という音と共に、音声が出なくなってしまった。ざわめく場内。そして、1分ほどすると、今度は映像も切れてしまった。いやー、こんなこと古い映画の中の出来事しかしないので、みんなビックリ。でも、すぐ説明があった。もちろん、映像が古いのではなく、落雷による停電で、3スクリーンとも停まってしまったのだ。防音設備のある劇場内なので、まったく気付かなかったが、音声が止まるとかすかに雷鳴が轟いているのがわかる。電気はすぐに復旧した。一瞬だけの停電だったが、再上映に少し時間がかかり、結局、20分後に、5分ほど巻き戻されたところから再スタートとなった。いやいや、いろんなことがあるんですね。まだ序盤だったので、それほど気にはならなっかった。結局、30分ほど長くかかって、映画は終了。映画自体は悪くなかったので、満足して帰ろうとしたら、出口で、スタッフがお詫びしながら、無料招待券を配っておられた。まったくの不可抗力なのにね。次回も満席の上、30分は遅れたので、ロピーはごった返していた。まあこんな日に、ほんと災難なことだと同情しますわ。外に出たら、大きな水たまり。かなりの雨だったようだが、ちょどう雨は上がっていて、自転車で帰った。しかも帰宅してほどなく、また土砂降りの雨となった。電車は止まるわ、停電するわで、大荒れの一日だった。でも、おかげで冷気がはいって、猛暑も一服したし、ぼくにとっては、雷さまさまという一日でした。
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 映画は、ゴンチチの心温かなギターのメロディーと、湘南の夏の風景も美しく、どこにでもあるようで、どこかに忘れ去られたような、家族のすれ違い、葛藤、そして愛情が、丁寧に、やわらかな視点で捉えられている。「ああ、こんなことってあるよなー」というディテールや、セリワが笑いを誘う。若き日に人助けで亡くなった優秀な兄の命日に、集う3家族。老いた権威的な父親と、ダメ息子の葛藤。亡き兄への追慕と嫉妬。姑と嫁の冷かな戦は、時に愛情豊かに、時に厭味の当てつけのセリフガ連発される。母と実の娘、そし母と息子との微妙な関係に、老夫婦の何十年も前の若いころの恨み…。まあ、業は生きているということでてね。それぞれの思案を胸に、大切だけれども、口にすれば壊れてしまいそうな家族の絆が、豊かな人間洞察力で描かれていきます。それに、原田芳雄、樹木希林、阿部寛、夏川結衣、YOUと、なかなかの芸達者がそろって、そのやりとりが、やっぱりおもしろいなー。なーにも起こりませんがね。それもまた美しいです。
 ああ、「孝行を したいときには 親はなし」ってか。父と息子、なかなか面と向かっては、素直になれないものですね。

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コメント

これ、気になってる映画なんですよね~
好きな役者さんがそろってるし、、、、。
観にいきたいな~

投稿: Tねこ | 2008年7月29日 (火) 16:58

 Tネコさん、広島も暑いでしょうね。
 この映画、悪くなったですよ。
 ところで、娯楽や商業映画ではないけれど、『藝州かやぶき紀行』、広島の方にはお勧めです。熊野町の職人さん、すごいいい味だしてます。
 7月19日(土)~25日(金)・8月2日(土)~9日(金)
 広島・横川シネマにて帰郷アンコール上映ですね。

投稿: かりもん | 2008年7月30日 (水) 23:56

おお~わがふるさと「熊野町!」の職人さんが登場されるのですねこれは観に行かねばねば、、、、。
熊野町は、私にとって特別な、大好きな、町なんですよね~

投稿: Tねこ | 2008年7月31日 (木) 12:48

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