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『大いなる陰謀』

Img_2567  雨が多かった4月から、ここ2、3日は、初夏の陽気。日差しがまぶしい。何気ない街頭の風景だが、いっそう花も映える。自転車で二条の映画館まで25分ほど。けっこう汗ばむ。

 『大いなる陰謀』というハリウッド映画。しかも大物3名の競演。おなじみのご都合主義の大作かと思って、一瞬、躊躇したけれど、なかなかの社会派ドラマだったImg_2568_2

  アメリカは政治の季節を迎えている。大統領選挙が近いと、政治色の濃い映画が作られるのだ。これは、監督、ロバート・レッドファード。大物俳優が、ハッキリした政治的立場を表明し、候補者を積極的に支援していく。日本では、名声を得た俳優やタレントが、自らの政治や宗教を表立って明らかにすることはないし、この手の映画もあまり生まれない。

 確かに、政治的な立場が鮮明なので、評価も分かれるところだけれど、知的な会話がつづく社会派ドラマだ。ハリウッド定番の派手なシーンは少ないが、名優3名のやりとり(正確に2人の対決と、1人は若造との対話)が見応えがある。もし、これをダラダラ長時間やられると鼻につくのだろうが、90分とコンパクトなのもいい。

 将来の大統領候補と目される共和党の野心家議員(トム・クルーズ)が、若き日の彼を好評したベテランジャーナリスト(メリル・ストリープ)を呼び、アフガンにおける対テロ戦争の新作戦についての極秘情報をリークしている。泥沼の中東情勢を、自ら立案した作戦によって、一挙に打開をすべく少数の特殊部隊が動かす作戦だ。彼の執務室に飾られる写真や記事の数々だけでも、彼の立場を雄弁に語っている。このリベラル派と、新進気鋭の保守派の、二人の会話がなかなかスリリングなのだ。

 同じころ、西海岸の大学で、リベラルな大学教授(ロバート・レッドフォード)は、最近、授業をサボっているエリート学生を呼び出す。若者の反発に、静かに、しかし激しい議論を展開していく。

 そして同時刻、アフガンの高地では、議員の新作戦が攻撃が始まろうとしている。
 作戦によって、敵地の直中に取り残された2人の特殊部隊員。実は、大学教授の自慢の教え子。優秀な彼らも、マイノリティーの下層出身であるが故に、彼の反対を押して、行動することを選んだのだった。

 スクープを手にしたものの、放送をためらう彼女。それはかつて権力と共に、イラク戦争を支持して、ジャーナリストの責任を果たせなかった反省。そして「作戦のためには手段を選ばない」という彼の言葉に、陰謀の匂いを感じ、言いしれぬ不安感に包まれていく。彼女の涙がいい。それは無力感からか、それとも過去の過ちの反省なのか。やっぱり、メリル・ストリープはよかった。

 別々の3カ所での対話や物語が進行するうちに、徐々に絡み合って、ある種、(ロバート・レッドフォードが感じる)現代のアメリカの数々の矛盾点が明らかになっていくのである。

 見方をかえると、この映画自体が、プロパガンダであり、「大いなる陰謀」であるのかもしれないなー。その意味で、この邦題は、意味深だ。原題は「Lions for Lambs」(勇敢なライオンのような兵士が、ロバのような無能な指揮官の元で戦ったという、第一次体験の故事を下敷きだそうだ。ロバではなく小羊になっているが)

 これは、直接、映画のメッセージじゃなったけれど、やせても枯れても、どんなに軽蔑されても、アメリカは超大国、巨人なのだ。日本なんて、政治的、軍事的にまったく幼児、いや赤ちゃんのような無力な存在だということを感じさせられる。リベラルも、ネオコンも、アメリカのことだけしか考えていないが、それでも、スケールが違うのだ。今後、このアメリカに対抗しえる脅威は、中国だけかもしれない。いつでも、日本が子供扱いされるのが、よーくわかる気がしました。でも、別に巨人になる必要はない。子供だからこそ、見えて来る視点もあるんじゃないかとなーと。

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» やっぱり大事なんだな~ [育児・子育てファイト!]
163 名無しの心子知らず sage 2008/01/07(月) 11:13:45 ID:P0CvnZBM話しかけ話しかけってよく言われるけど やっぱり大事なんだな~と会話が成立するようになってきてすごく思ったよ。3歳5ヶ月♂。 1歳半検診で引っかかって1度プレ教室?に通うが遠方すぎて断念。 再検診で「次は3歳半検診で良いですよ」と中途半端に放置されて途方にくれる。... [続きを読む]

受信: 2008年5月 5日 (月) 00:12

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