ハンガリーの映画、あれこれ
久しぶりにハンガリー映画を見た。といっても、ハンガリーの映画は、日本でそれほど目にする機会はない。ぼくも、合作を含めて、4、5本しか見たことがない。『トランシルヴァニア』のルーマニアじゃないけれど、ハンガリーと聞いても、せいぜい、ドナウの真珠と呼ばれるブタペストが浮かぶ程度で、どうも日本人には遠い存在だ。その意味でも、難しい勉強しなくても、いろいろい知らない世界を楽しく教えてもらえる、映画ってほんとうに有り難いものだ。
その1本が、『太陽の雫』。薬酒で財をなした一族の、時代に翻弄された物語。帝政時代の高名な裁判官にして、変革の波に翻弄される祖父。オリンピックのフェンシング金メダリストの栄光が、ナチスの強制収容所で囚人として一瞬にして終わる父。さらに、共産党支配下、父の無念を晴らすべく、ナチ狩りに明け暮れなる忠実な党員が、恋と、ハンガリー動乱に巻き込まれながらも、自分を回復していく。三者三樣ながら、政治と時代の波に翻弄されて、栄光と挫折を味わい、同時に激しい恋に生きるユダヤ人一族の姿を壮大に描く、いわば大河ドラマだ。その姿を通して、揺れ動いたハンガリーの近代史が描かれていく。しかも、この3代に渡る祖父、父、息子を、レイフ・ファインズが一人で演じ、それぞれ有名女優との絡みも見どころだ。ただ、どうしても総花的になってしまい、物足りなさが残ったのも事実だ。
もう1本が、『暗い日曜日』。やはりハンガリーのユダヤ人が主役。時代は、第二次大戦前夜のブタペスト。騒然として時代に翻弄される男と、そのハンガリー人の妻、そして作曲家の奇妙な恋愛関係と、後にナチスの(狡賢く、強欲で、計算高い)その意味での極悪將校となるドイツ人の友情と裏切りを、料理と、自殺ソング-『暗い日曜日』(Gloomy Sunday)の曲に載せて描かれていく。ちょっとしてサスペンス仕立てになっていて、なかなか面白かった。主演女優の白い肌が印象深く残っている。
そして、今回の『君の涙、ドナウに流れ ~ハンガリー1958』を観た。1956年のハンガリー動乱の悲劇と、同じ時、メルボルン・オリンピックの水球の栄光を描いた人間ドラマだ。これがメーンのつもりが、ちょっとここまで。続きは明日に書けたらぜひ。
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