カフカ『田舎医者』
今年、新春1本目は、珍しくアニメになった。
カフカ『田舎医者』。不条理や、孤独、不安の作家、カフカの作品を、短編アニメでオスカー候補になった、山村浩二の監督でアニメ化された。
しかも、声優が、狂言師で人間国宝の四代、茂山千作など、茂山家と、作家、金原ひとみの異色の組み合わせだ。
アニメーションと、狂言と、そしてカフカ。うーん、短い予告編を何度か観たときから、不思議な魅力があった。
珍しく初日に劇場へ。どうせなら、舞台あいさつも聞きたかった。いつも閑散としている「みなみ会館」も、今日は満杯。立ち見も出ていた。外から並んだのも、スカパラの舞台挨拶の映画、以来。地元、京都公開ということで、狂言師、茂山七五三(しめ)、茂山 茂のお二人のあいさつがあった。狂言風のあいさつで始まる。伝統を継承しながら、伝統に甘んじることなく、新しい風にも開かれたいる姿勢。米寿の人間国宝が、最先端のアニメとのコラボレーションする。でも、「千作さんは、良くも悪くも、常に千作さんでした」という言葉に、一筋の道を極めた卓越した名人の姿をみた。ある意味、父の姿にだぶる思いもする。
アカデミー賞にノミネートされた、落語を材料にした『頭山』。ケチな男が、拾ったサクランボをタネごと食べたら、見事な桜の木が頭にはえて来るというやつ。ラスト、なかなかシュールな、ブラックな落ちがつきます。当然、三味線の浪花節語りとの相性もよかった。
フランス童話が原作という、『年をとった鰐』。哀愁のある、なかなか深い味わいのある寓話やね。よくわからなくもないけれど、淡々と、シンプルな映像で、不思議な魅力を感じしました。
そして新作の短編が2本。『校長先生とクジラ』は、捕鯨反対のキャンペーンの色合いが強かったけどなー。http://www.yamamura-animation.jp/body_j.html
そして、最後に、『田舎医者』。
一筋縄でいかない不思議な絵と、不安定な映像が、マッチしている。なにか、ザワザワする不安感みたいものと、それでいてどこか美しさも感じた。でも、正直、一度観ただけでは、難解で、よくわからない感じもしたが、すごく丁寧に、繊細に、カフカのもつある種の空気を体現した作品なのだということはわかった。きっと、もう1度観たら、もっと楽しめるだろう。でも、今週はもう観れない。未見の『いのちの食べ方』と、『マザー・テレサ』の2作品、そして『サディステック・ミカ・バンド』の4本を観る予定なので…。
『本当の道は、一本の綱の上を通っているのだが、綱が張られているのは高い所ではなく、地面すれすれである。
それは歩かせるというよりむしろ、つまづかせる為のものの様に見える』
冒頭の言葉の響き、よかったです。人生やね。
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コメント
カフカの「変身」も、以前映画化されていましたね~気になりつつ観ていませんが。アニメーション、面白そうですね。声優も興味深い二人だし。
紹介していただいた「いのちの食べ方」は、観に行く予定にしていますので、合わせて観たくなりました。「いのちの食べ方」は、十三にある第七芸術劇場にてみようと思います。ピンク街のど真ん中にあるドキュメンタリー中心に上映しているミニシアターです。
投稿: さち | 2008年1月 7日 (月) 19:28
さちさん、ようこそ。
みなみ会館は、「田舎医者」と、「いのちの食べ方」を交互に上映されています。
東京で上映されて、ある程度客が入ったら、次ぎに名古屋や関西へ。まず、大阪の第七芸術劇場か、シネ・ヌーヴワなんかであって、そのあと、神戸や京都のみなみ会館にかかるもの多いですね。一癖も、二癖もある映画ばかりです。ぼく、いまいちばんきになっているのが、「belief」という、カルトに入信した母親の姿をカメラにおさめたもの。早く京都で上映されないかなー。
一度、映画をご一緒しましょう。
投稿: かりもん | 2008年1月 8日 (火) 00:22