オスカー・ピーターソン
クリスマスを前にした、今年12月23日、ジャズ・ピアノの巨人、オスカー・ピーターソンが亡くなった。82歳。一般紙でも、かなり大きな記事の扱いだった。
どのアルバムも、安定感があり、ウルトラ技巧派であり、力強く、ハッピーな演奏をする。ただ、日本人に好まれるマイルスやコルトレーンのような翳りとか、破天荒さ、難解さの陰は薄い。キャリアの初期も、中期も、そして晩年も、だいだいのアルバムが、85点以上はとっている優等生といったイメージがある。それもかなり明快で、ハッピーな優等生である。ほんとうは評価されることなのだが、長いキャリアがあるジャズ・ジャイアンツのわりには、けっしてナンバーワン、ピアニストとしては取り上げられない。長生きしたのも悪いのかもしれんなー。どう考えても、パウエル、ムンク、そしてビル・エバンスの方が人気があるし、現役のチック・コリア、キース・ジャレット、ハーバー・ハンコックなどの扱いに比べると、どこかその次ぎという感じは歪めない。確かに、彼らのように常に新たな地平、時代を切り開くというオピニオン・リーダーのイメージではない。むろん、彼も偉大なクリエイターなのだが、時代に左右されない、個性的な奏法、安定感、一貫性という方が、目につくからだろうか。もちろん、それはほんとうはとてもすごいことなんだけれども、これだけでは、なかなか日本での高い人気とは結びつかない。聞き手は、すこぶる飽き易いのだ。もちろん、キャリア相当の人気、評価(グラミー賞7回、日本でも世界文化賞の受賞など数々)も高いし、日本のジャズ、秋吉敏子、小曽根真、そして今をときめく上原ひろみなどの日本人ピアニストに与えた直接の影響も計り知れないのだが、なんとなく、少しジャズに詳しくなると「明快なピーターソンはもう卒業」という生意気な感じがあるなーというお話。
で、200枚以上あるという作品の、ほんの一握りのものしか聞いたことがないが、その中から、お気に入りものを紹介。
まずは、一般の方のイメージにある、スイングするジャズぽい雰囲気なので、聞き易いものから。一家に一枚の定番では、なんといっても、『プリーズ・リクエスト』(①)。この邦題、なんとかしてくれーと言いたいがね。なかなか購入するが恥ずかしくて、いろいろ揃ってから、CDでゲットした1枚。でも、まず、ここから入門するのが王道だったですね。
『ザ・トリオ』も定番中の定番。ライブですね。世にさまざまピアノトリオあれども、「THE TRIO」で、通用するのは彼のピアノトリオだけ。レイ・ブラウン(b)、エド・シグペン(ds )のトリオは、ジャズのピアノ・トリオの最高峰の評価を受けている。
『ソロ!』(②)は、MPSというレーベル。音がいいですね。有名スンダードを中心にしたソロアルバム。ジャズに詳しくなくても、「すごいなー」と聴けばすぐにわかる、超ウマです。
個人的にぽくが好きなのは、ライムライト原盤の『カナダ組曲』。全曲オリジナル。カナダ人の彼の祖国への敬愛と、リリカルな一面が聴ける一枚。
パヴロ時代では、さまざまなトランペットの名手たちとディオしたもの。なかでも、これで、グラミー賞をとったのかなー、『オスカー・ピーターソン & ディジー・ガレスピー』。これもよく聞きました。マーキュリーのピアノトリオと、トランペッターのクラーク・テリーとの共演盤も好きでした。(『オスカー・ペータソン・トリオ+ワン』)
また、歌伴の名手でもあり、アニタ・オディ、エラ・フィッツジャラルドなど、名盤のバックには彼がいる。数々好きなのがある中でも、『Ella & Louis』(③)。ジャズの王様、ルイ・アームストロングと、女王、エラ・フィッツジェラルドの共演。超一流同士だもの、バックも超一流じゃなくっちゃね。もうこれは、ジャズとか、スタイルとかを超えた名盤です。これは、ピータソン云々じゃないけれど、大好きにして、お勧めの一枚だ。
彼の余芸というのには、あまりに玄人肌すぎるヴォーカルが楽しめる『ロマンス』(④)。ジャケの雰囲気、彼が敬愛するナット・キング・コールばりの、甘い美声が楽しめます。こちらは、ドラムではなく、ギター(バニー・ケッセル)入れのピアノ・トリオ。ツボおさえた、歌伴奏の名手だけのことはあるなー。このアルバム、けっこうお勧めしています。
以上、わりと有名盤ばかりなので、Amazonなんかでも、入手可ですね。でも、その手の紹介で、小銭を稼ぐ気はございませんので、各自でお探しくださいなー。
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コメント
おはようございます。音楽ネタでの返信ははじめてです。学生時代に友人から聴かせてもらったのが、キースジャレット、オスカーピータソン、ビルエバンスでした。木屋町にあったブルーノート、京大近くのサンタクロース(ここで初めてジョニ黒という酒をご馳走になった)当時は捨得、たくたくにはよく行ってましたが、はじめてこの三人のジャズを聴いた時の感じは凄いものがありました。また、一度お話を聞かせて下さい。
投稿: 稜 | 2007年12月30日 (日) 07:37