『大統領暗殺』
ファースト・ディーなので、午後から1本だけ。二条の映画館まで。
『大統領暗殺』。なんとも物騒なタイトル。どうせ、例のごとくのハリウッドヒーロー物かと思いきや、これがとても、よく出来ていて、ある種、面白かった。
ただし、わが国の邦題は、当初、『ブッシュ暗殺』。さすがに映倫が通らず、このタイトルになったそうだけど、確かに無理があるわね。倫理観にひっかかるかもしれませんね。だって、実際のブッシュ大統領のさまざまな映像を使って、本人が、空港につき、肉声の講演をし、そして支援者に応え、その最中に、まるで本人が実際に狙撃されたように見せている。もちろん、本物のチェイニー副大統領まで登場して、すぐに大統領に就任する。そして、それらしいコメントや大統領の追悼演説を行い、暗殺を、憎きシリアの陰謀としてこじつきようとまでする。それらを伝えるニュースも本物らいしものが使われる。 ケネディ大統領暗殺と、レーガン狙撃事件(殺人未遂)という、実際におこった大統領暗殺事件を下敷きにしいるようで、その分、確かにリアリティーがあった。
その意味では、全米では公開中止になりかけるほど、きわもの映画のにおいがするけれど、実はディテールにリアリティーを求めた、至って真面目な作りだと思った。
しかも、それを、ドキュメンタリー風の手法で伝えている。実際の映像に、環視カメラや、TVカメラの映像もつなぐ。その合間、合間は、事件の関係者のインタピューが大半。つまり、事件をそれぞれの立場で証言するというつなぎ。この回顧者が、元大統領補佐官、事件を担当した元FBIの捜査官、大統領の元シークレット・サービース、解雇された護衛責任者、シカゴの警備担当者、容疑をかけられた男に、大統領への抗議デモを指揮していて拘束された男に、容疑者のアラブ系の妻など。それぞれの立場の人が、その人なら、当然、言うであろうことや、もしくはその立場でしかいい得いない事実などを、次々と証言して、事件の真相と、その背景にある国家の闇に迫ろうというもの。
もちろん、ここは俳優さんたち。でも、実際の知らないメンツを集めているので、ウソだと最初から分かっていても、いつのまにか本物の証言と見間違えるばかりだ。
後半は、サスペンスとしての容疑者探しという見どころがあるのだけれど、ほんとうに伝えたい点は、9、11以降のアメリカの息苦しい空気だろう。ジワリジワリと、公共の福祉(というより国家権力の抑圧)が優先されて、個人の人権がジワジワと締めつけられている。テロとの関係で、偏見的で、権力に有利な市民操作と、見込み捜査で犯人が捏造されていく。そして、大統領暗殺という非常事態だからと、国家権力側に都合よく、市民を環視したり、拘束しやすい「愛国者法」なる法律が作られ、さらに新たな国際的な陰謀への発展しそうな雰囲気で終わっるのだった。
ところで、はじめて、プレミアスクリーンなるもので観ました。新幹線のグリーンシートのようなもの。座席が個別で(つまりひじ掛けが、となりとかぶらず二つある)、リクライニングになって、前にもテーブルもありました。当然、前後も広い。もっとも、お疲れなのか、ゆったりしていたおかげで、容疑者とは別の、真犯人探しのポイントのところを、ウツラ、ウツラと見逃してしまうのでありました。オイオイ。
帰りに、「雨林舎」によって、温かいお茶飲んできました。落ち着いた雰囲気の、手作り感のカフェだったけれど、座った席の照明が暗くて、本は読みづらかったです。
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