『雲南の少女 ルオマの初恋』
このところの中国映画は、辺境部分に光りをあてた作品がいい。ひとりのチベット女性の波瀾の一生を描いた『チベットの女 イシの生涯』は、チベット語。海抜4700Mの山を舞台にしたすさまじい男の生きざまを描いた『ココシリ』は青海省。『モンゴリアン・ピンポン』や『天上草原』は、内モンゴル自治区が舞台のモンゴル語の作品。
さて、『雲南の少女 ルオマの初恋』。雲南省の山岳地帯にすむ、ハミ族にスボットがあたる。中国本土よりも、いま話題のミャンマーや、ラオス、ベトナムなどに近い地域。
冒頭の5分。ためいきがでるほどの美しい雲海と、棚田の風景が広がる。自然の息づかいまでがリアルに伝わってきそう。まさに桃源郷。アジア的な現風景ですよね。ここだけでも、映画代1,000円也の値打ちありでした。
映画は、チャン・イーモウの『初恋のきた道』のようなロマンチックなやさしさと、フォ・ジャンチイの『山の郵便配達』の風景とヒューマニズムの美しさを彷彿させる初々しい作品。主演のハニ族の少女。チャン・ツィイーまでの大物になるの かどうかはともかく、こちらも映像そのままに、17歳の揺れる女心を演じて、まぶしい魅力があった。民族衣裳も美しい。寡黙な老婆の姿も心打ちます。
ただし、桃源郷も、しょせん、旅人にとっての都合のよいおとぎ話。人間は、利便性と、経済的発展を選んでいく性にあるようだ。彼女の夢は、大都会広州に出て、乗り物のエレベーターに乗ること。近代化にあこがることを止めることはできない。
映画自体は、都会的な空気をもった男性との、ほろ苦い初恋の物語で、けっして目新しいものはなかった。でも、いいんです。あんまり難しいことは考えずに、90分間は、桃源郷の画像に身を委ねる。美しさの中で、やさしさと、心あらわれるような映画でした。
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