「つくられた関係」より
10月の真宗カウンセリング研究会の月例会。
例によって、ロージャズ論文の輪読だ。
援助的人間関係の流れの中で、よく知られている行動療法や実験心理学のいくつかの結果から、援助的な関係に客観的な成果を語ろうとする一段。
彼の引用の意図とは別にしても、示されていた3つの報告が面白かった。
なかでも、ハーロウ(Harlow,H.F/訳ではハーロー)の子ザルを使った代理母親の実験(1958)。もう50年も前のものなのに、今でも「子育て」の論文などで取り上げられている有名なものだ。
ほんらいは、さまざまにパターンの状況で実験されているが、大まかなあらましはこんな感じだ。
身体の表面が柔らかい布で作られた母親模型(soft mother )と、針金で組み立てられた母親模型(hard mother)で、いずれの模型もアカゲザルの生後間もない赤ん坊が,母親ザルと思って抱きつきやすい大きさに作られているが、母親の顔は,布製の方は丸い形のもので、針金製のは長方形であった。
さらに、両者にはもうひとつ決定的に違う点を加える。針金製のものに、授乳機能(つまりミルクが出る)を加えたのである。(ほかに、4パターンの模型や、乳房をつけたパターン。これに、動くおもちゃの登場などの外的ストレスの場合の行動などの実験する)
つまりは、「肌触りのよさが安心感、温かさをもたらすsoft mother(柔らかな母)の人形」と、「冷たく、固いが、生きる糧のミルクを提供するhard mother(堅い母)の人形」の二つに、子ザルがどう接するかといのうである。
当初は、さすがに堅いお母さんに近づきミルクを飲むのだが、だんだん柔らかな母がすきになる。そして日常の大半は、柔らかいお母さんにしがみつき、遊び、楽しんでいる。見知らぬものが近づくと、柔らかな母にしがみつ安心している。「その安定感を恐ろしい世界へ冒険的にはいり込む場合の基地として使っている」のである。
生きてく上で、食は生存欲の根源である。しかし、人は(いや哺乳類も含めて)パン(ミルク)のみの報酬で、生きているのではない。これは、今日の母子関係を語る上でも決して無縁ではない。どれほど、物が豊富に満ち溢れ、飢餓の恐れがなくても、もし冷たく、硬い母だけでは、人は育たないのである。やさしさが、母の温もりとして、子供の情緒的安心感をもたらすのだ。幼き日より、人が育むべき、安心感や安定感の源泉になるのである。
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