『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』
9月号の「Esquire」の日本版は、ロサンゼルス建築と、ボサノヴアの特集だった。ショビンやボサノヴァは、得意の守備範囲だけれど、別に、ロスの建築には興味はない。ところが、そこに先月、映画でみた、フランク・ゲーリーの半世紀の足跡がとらえられていて、映画のことが書きたくなった。
フランク・ゲーリー。「建築家の異端児」「脱構造主義の旗手」と称される、世界的な天才建築家だ。彼が80歳を前に、いまだに斬新な創作意欲に満ちる、その魅力的な姿をカメラはとらえている。
監督は、「愛と哀しみの果て」や「ザ・フォーム/法律事務所」などのオスカー監督、シドニー・ポラック。初の長編ドキュメンタリーだそうだが、フランク・ゲーリーへの深い愛情が滲み出ている。構えのないリラックした態度から間見える巨匠の素顔。お互いの信頼、友情の産物だろう。それにしても、3次元の建築の世界を、2次元のフィルムにいかに収めるのか。随分、腐心があったことだろう。
建築家というより、芸術家といったほうがいいのかもしれない。その奇抜な造形が産み出されるプロセスを見事に描いている。アイディアが浮かぶ。パートナーに指示をだし、無造作に厚紙を切り、セロハンテープでくっつけ、いろいろと折り曲げる。紙や素材を替えていく。まるで幼児の工作のようだ。でも、こんな大雑把な簡易模型から、世界的な巨大建築が産み出されていくのである。
世界的評価と名声。同時に、批判や酷評の数々(異常者とか、醜いとか、時には冒涜という言葉での非難まで。つまりは、毀誉褒貶(きようほうへん)の数々こそが、彼が、常に留まることなく、世間常識に捕らわれない自由な創作を行っている証なのであろう。止まらぬ創作意欲、産みの苦しみを語り、作品をいとおしむように愛で、そして完成後の落ち込む心理を率直に語る姿など、人間的な魅力が随所に垣間みれる作品だった。
代表的な作品。映画では、これらの創造的なフォルムが生まれるプロセスがよくわかります。
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