『ボンボン』
『2:37』のあと、もう1本『『ボンボン』を観る。
緊迫感から一転、のんびりした、オフ・ビートの感覚の映画。アルゼンチンですか。このところ、アフリカを素材にした映画が多いが、メキシコ、ブラジルなどの南米ものも、いいものが多いね。
一昨年だったか、映画小国「ウルグアイ」から『ウィスキー』が、ちょっと話題になったけれど、やはり、オフ・ビートのとぼけた味で、それでいて、メランコリックで、温かい雰囲気のある、なんとも味のある映画だった。案外、アキ・カウリスマキのフィンランドや、アイルランドとか、ノルウェー(『キッチン・ストーリー』がお勧め)なんかの、大国の周辺部の、映画小国のほうが、とぼけた、味のある映画を造る余裕があるようだ。もしかすると、商業ベースとの絡みがあるのかもしれない。ちょっと横道に逸れた。
で、『ボンボン』。ほとんど、素人俳優さんだそうだすが、主役の、さえない中年(日本なら団塊世代ですな)おやじが、いい味をだしている。(本名のまま、役名も本名のまま出演しているそうな)。整備工として勤めていたGSを首になり、現在、失業中。しかも、かなり以前に奥さんにも逃げられ、娘のところに、肩身狭く居候している。でも、この家も、旦那がさえず、子だくさんで、貧窮していることが、アリアリ。アルゼンチンも、大都会の裕福層を除いて、かなり失業も多く、庶民の生活と、決して楽ではないことが、画面から滲み出ていますね。地方都市の、下層部にしわよけがきている。
でも、このおやじ、穏やかで、いかにも人が良く、気が弱そうな雰囲気のオーラがいっぱい。商売は下手。手作りのナイフも売れ残り、あげく警察に捕まったりと…。まったく冴えないダメぶりがいい。それが、ちょっとした親切から、「ボンボン」となづけられる犬を押しつけられるから、たいへん。この、ボンボンが、またまたとぼけたいい味だしている。でも、こいつが立派な血統書付の、ドゴ・アルヘンティーノという種類の猟銃犬で、愛犬家の間でも、注目を集めるような名犬だった。その犬のおかげで、おやじさんにも、少しずつ幸運が舞い込んでくる、ラテン版「わらしべ長者」というお話。
もっとも「長者」というのもなんだけれどね。けっして大作や、問題作だけでなく、ちょい哀愁に、でもホノボノと温かい気分になれる、とぼけた味の映画は、アクセク働く人にお勧めかも。ましてや愛犬家にはたまらんでしょうなー。そうそう、絵本仕立てのパンフレットも愛らしいです。
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