『ダーウィンの悪魔』
『ダーウィンの悪魔』。人間格差の現実と、いま世界が抱えているあらゆる難問を浮き彫りにした、強烈なドキュメンタリーだった。ヴィクリア湖は、生物多様性の宝庫であることから「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていた。その湖に、新しい生き物が放たれた。日本にも、白スズキとして輸入される白身魚。肉食の外来魚ナイルパーチは、固有種の多くを駆逐して爆発的に増加。湖畔にはナイルパーチ一大魚産業が誕生し、周辺地域の経済は潤う。それは「けっこうなことじゃないか」では終わらない。一方で、悪夢のような悲劇が生み出されていた。ごく一部の裕福層が搾取し、新たな経済格差から、貧困→売春→エイズ→ストリートチルドレン→ドラッグ→湖の環境汚染と、まるでドミノ倒しのように悪夢が連鎖していく。さらには、この魚を輸出するロシア籍の輸送機は、環視の手薄な空港に、密かに武器輸入しているとの疑惑が浮かぶ。この武器こそが、さらなる貧困や少年兵を生み、かの地での殺戮や紛争をますすま助長し、悪夢の循環はさらに深まっていくというのだ。
一握りのその日の糧を争うように奪い合う子供たち。恐怖におののきながら、肩を寄せ合い、粗悪なドラッグで一時の安らぎを得る。彼らのその表情に、背筋が凍りつく思いがした。強大な資本主義が世界中を覆いつくしている今日、悪夢のグローバリゼーションは、決して日本に住むぼくたちにも、無関係ではいられないと警鐘をならしている。
上映が終了したけれど、たまにアンコール上映もなるようだ。けっして、気分のよくなる映画じゃないけれど、機会があれば、ぜひご覧いただきたい。(もう少しつづく)
| 固定リンク
「映画(アメリカ・その他)」カテゴリの記事
- 『サマー・オブ・ソウル』~あるいは革命がテレビで放送されなかった時~(2021.10.01)
- 映画『ライトハウス』(2021.07.24)
- 『FREE SOLO』(2020.06.23)
- 今年も206本(2019.12.31)
- 『草間彌生 ∞ infinity』(2019.12.30)
コメント