アフリカを舞台にした映画あれこれ
昨年あたりから、洋画は、ちょっとしたアフリカブームである。
日本人にすると、距離的にも、経済的にも、そして精神的にも遠い地域で、まだまだ昔のアフリカというステレオタイプから脱しきれていない面がある。
でも、ヨーロッパからみると、事情は異なる。特に北アフリカは、地中海を挟んでお隣同士だし、戦前の植民地だったこともあり、言語的にも通じている。日本から見ると、経済的にも結びつき、エスニックの匂い漂う東南アジアよりも、まだ近い関係なのかもしれない。
それでも、昔の映画では、大自然や野生王国的な、未開拓の異文化の地奇異な目で捉えられていた。しかし、このところの映画は違う。かの地での貧困や紛争が絶えない大きな要因として、ヨーロッパなどの先進諸国の経済的な植民地として、さまざまな不平等や資源などの搾取を受けている、その巧みな手口にスポットを当てた社会派の映画も多い。しかも、それらが、高い評価を受け、興行的にもそれなりの評判を呼んでいる。
昨年は、レイチェル・ワイズがアカデミー助演女優賞に輝いた『ナイロビの蜂』。外交官と、社会活動家の妻が、アフリカの地と、人々を食い物にする強大な製薬会社との暗闘をテーマにした、悲劇のラブ・ストーリー。
そして、上映を求めた運動で、ちょっとした社会現象にもなった、『ホテル・ルワンダ』。94年にルワンダで起きた史上最悪の大虐殺を取り上げたもの。当事者同士でも、実は見分けがつかない、ツチ族と、フツ族たちが、ナタや刀など振りかざして、100日間で、100万人も大殺戮が起こった。殺戮が始まると、白人や外国人しか護れない、国連平和維持軍の活動は限界に到り、見捨てられた現地の人々を、叡知と勇気に溢れた行動で救出し、後に、アフリカのシンドラーと呼ばれるホテルの支配人の物語。ほんの10数年前のことである。なのに、あまりにも日本に住むぼくたちは無関心で過ごしている。同じ背景で、いまは、『ルワンダの涙』が上映されている。『ホテルルワンダ』の方が、評価が高いが、ぼくは『ルワンダの涙』に涙した。実在のキリスト教の神父をモデルに、ある種、信仰の無力さと同時に、その尊厳さを伝え、また人間の恐ろしいまでの狂気や弱さの一面と同時に、美しさを伝える作品だった。SHOOTING DOGSという原題の意味の深さが伝わる。
ナイロビの蜂が、薬なら、『ブラッド・ダイヤモンド』は、ダイヤモンド。ダイヤしか信じない野心家でありながら、大きな孤独感と傷をもった男をディカプリオが演じる、ハリウッド・メジャーの大作。西アフリカのシエラレネスの内戦を背景に、先進国による資源の搾取-血に染まった不法ダイヤも浄化されて、高価な商品となり、先進国に住むぼくたちの購買欲を刺激していくことになる-さらに、誘拐されて洗脳されていく、少年兵の問題にも言及している。
いま、上映中。かなりヒットしています。(つづくのだ)
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