『めぐみ』と『不都合な真実』と『エンロン』と。
今年に入って観た社会派ドキュメンタリー映画が、面白い。
北朝鮮の拉致問題を捉えた『めぐみ』~引き裂かれた家族の30年~は、アメリカ人の眼からとられた家族の肖像。日本人とは、また一味視点が違っている。まだ拉致とはわかならい、失踪事件の時点での、小川宏ショーでの母親の呼びかけが胸に迫ってくる。
元アメリカ副大統領のゴア氏が訴える地球温暖化の問題を捉えた『不都合な真実』。歴史に「もしも」はないけれど、投票集計のやり方次第では、ブッシュ大統領でなく、ゴア大統領の誕生だったわけで、当然、アメリカの内政、外交、そして環境問題と、世界の状況は、違った展開になっていたことは間違いない。次のエンロンとブッシュの関係も、グレーな関係なのだが、ここにも歴史の綾がある。反対派の反論や、政治キャンペーンという批判も受けているが、今年のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞 受賞の実力に偽りはない。邦題も冴えているが、目を逸らしてはいけない問題だ。
『エンロン』~巨大企業はいかにして崩壊したのか?~は、アメリカを揺るがす、一大経済スキャンダルを描く。1985年の設立以来わずか15年で、北米7位、世界でもトップ15位に入り、アメリカのエネルギー政策に絶大な影響を持っていた巨大企業が、不正発覚のスキャンダル以来、わずか2ケ月で、2兆円もの負債を抱えて破綻するのである。世界への影響も絶大であった。その後、日本のライブドア事件などの経済事件も同根なのだろうが、実にかわいく見える。それほど強烈な規模だ。しかし、複雑な経済問題のようで、実はひとりひとりの人間のドロドロした欲望が丸出しにされている。ここまで規模が大きくなる背景は、単なる一企業の問題に止まらず、甘い汁を吸う政治家、銀行、証券会社、新聞・雑誌などのマスコミ、そして会計事務所に、弁護士、すべて、誰もが信頼を寄せるグローバルな一流大企業が絡んでいる。しかし、「赤信号みんなで渡れば怖くない」と、儲かるのなら、理念も、人間性も、理性のカケらもなく、ただただ金の亡者と化した恐ろしい人間の実態がある。結局、北米7位の13兆円という巨大企業のエンロンが、何を売り、なぜ拡大し、利益を得ているのかを、誰も説明できなかったのである。あくまで経済事件なので、親密で、深い関係にあるブッシュ大統領や、エネルギー自由化政策でカリフォルニアー州を食い物にした挙げく、誕生させたシュワルツネッガー加州知事への影響力など、政治家絡みのものはグレーのまま葬りさられた。経済用語に疎いぼくでも、グイグイと引き込まれた1本。
もう1本、『ダーウィンの悪魔』もよかったが、これは後で。
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