『読む力・聴く力』
『読む力・聴く力』というタイトル、河合隼雄・立花隆・谷川俊太郎というメンツ、そして発行が岩波書店というのだから、即お買い上げ。でも、インド女性から、「期待は喜びを半減させる」ということわざを教わったけれど、期待しすぎた。短めの講演会と、その後の鼎談の口述筆記したものなので、読みやすいけれど、やや散漫なのが残念。もっと深めてほしかった。しかし、そこは各界の第一人者のお三人。聴く、読むということの背後には、「生きること」があると、河合は結んでいる。
臨床心理家として聴く河合。単にクライエントの言葉を聞くのではなく、その背景にあるすべてに耳を傾ける。一瞬、一瞬の出来事との共時性に深い意味を見いだし、かつ、その場にいる自己と、その直感力にも信頼を寄せる態度で、クライエントをも包み込む。
詩人の、意識下の一番深いところの言葉にならない、いわば言葉の世界の外にある体験(親鸞様の「噫」ですかね)を、あえて言葉にしようという、言葉を超えながら、言葉で伝える姿勢。
そして、検索エンジンを使うと、ほんの0、0何秒という瞬時に、世界中のありとあらゆるバーチャルな頭脳とつながり、リアルタイムで情報を共有しあえるという素晴らしさ力説する立花も、結局、情報の洪水の中で、どれを選び取るのかは、「出会い」の問題となるという。そして、立花が、ネットの無限の可能性を強調するのに対して、河合、谷川の懐疑的な態度が、結構、面白かった。
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