『ニキフォル』~知られざる天才画家の肖像~
そして、もう1本は、ボーランドの天才画家、ニキフォルの晩年を描いた作品。(詳しくは、以下の公式サイトで)
いやいや、サイートに続き、また初めて知る人でした。でも、チラシには、「いま世界がもっとも注目する、ポーランドが生んだ、アール・ブリュットの聖人-ニキフォル。魂のままに描いた感動のリアルライフ」とありましたが、日本でも人気が高まってきているのは、ここ数年のことらしいです。ただ、こちらは、ドキュメンタリーではなかったけれど、実話に基づくストーリー。また、加工されていない、生のままの芸術という意味のフランス語で、美術教育や文化教養とは無関係に、本人にしかわからない内的衝動にかられた造られた意味をあらわす、「アール・ブリュット」という言葉も、ぼくにはこれまでなじみがなかったですね。
ボーランドの田舎町の風景。特に雪景色が美しかった。白に、共産党のシンボル赤旗がなぜか新鮮。彼の生涯には、実際は二度の世界大戦を挟んでいるのだが、映画では、1960年代の晩年の姿のみが描いている。出生も不明、貧困と言語障害と、そして肺結核でありながら、まさに神に選ばれて、ひたすら描き続けたニキフォル(映画では、86歳になるポーランド女優が、「彼」を好演している。うまい)。頑固で、絵画に対しては辛辣で、世間の名声や地位は理解できず無頓着で、頑に自分の生活スタイルを貫き通して描き続ける。首都や外国では、大々的な絵画展が開かれる有名な画家も、田舎では、身寄りもなく、結核におかされた厄介ものとして、時に路上生活で物乞いする。
今回の映画は、彼よりも、むしろ最初は不可解な形で渋々と、しかし後には、妻と対立し、都会への栄転もなげうって、彼の晩年の後見人となって、愛情をそそぎつづけた、平凡な画家との出会いと、彼と過ごした日々が描かれている。天才の言動に振り回されながらも、その才能のみならず、彼自身の人間性に魅せられていく、そのまなざしがよかっかなー。
映画館のロピーでも、ミニ絵画展やってました。柔らかな素朴なタッチの、温かくて、かわいい絵が並んでいました。
私の絵は私の分身なのだ。
他の奴らの絵とはまったく違う。
もっと近くで私を見てごらん。」
(高名な画家、ニキフォル)
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