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昨年の日本映画と『赤い鯨と白い蛇』

 日本映画が、興行的にも好調だという。ぼくは、昨年、新旧合せて、150本ほど映画を見たが、そのうち120本ほどが、映画館で見た新作。でも、ほとんどは洋画である。でも、ハリウッド大作よりも、ヨーロッパやアジア、南米映画のほうが多くて、多種多様の国籍だった。日本映画は、そのうち1割強しか見なかったが、でも心に残る作品が多かった。各種映画賞の評価とも一致していた。内容的にも、充実していて、今年は日本映画を観に行く機会が増えそうだ。

 お薦めは、『ゆれる』。あと、『嫌われ松子の一生』(これは意外な展開で、思いのほかおもしろかった)、『フラガール』、『雪に願うこと』、『武士の一分』(手堅い)あたり。評判の『かもめ食堂』は、ぼくには退屈。ドキュメンタリーでは、『蟻の兵隊』がよかったし、『ヨコハマ・メリー』、『三池』も、終戦から戦後の高度経済成長の日本を支えた、負の遺産(風俗と経済の違いはあるけれど)に、奇異ではなく、温かなまなざしが向けられていてよかった。

 Akaikujira_siroihebi_01_2 もう1本あげると、昨日観た『赤い鯨と白い蛇京都では今年の上映作)が、静かに、こころに染みる深い作品だった。まったく派手さはないし、何も起こらないのだが、こういう作品が珠玉の名編というのだろう。監督は、齢77歳にして、映画監督デビューのせんぼんよしこ。女性として年齢を重ね、また戦争の記憶持つ世代として、徐々に薄れゆく戦争の記憶を、声を荒らげずに、まことに静かに訴えていた。「赤い鯨」の意味も、映画の後半になるまでまったくわからないが、どこか悲しい。何か黒木和雄監督紙屋悦子の青春』に通ずる匂いを感じた。

 映画は、房総半島の館山の風光明媚な地に戦前から建つ、田舎の旧家が舞台。いまや取り壊されようとするその茅葺き屋根の旧民家にかかわってきた3組-5世代(70代後半、60代~50代後半、40代~30代後半、そして20代と、10代)の、世代も背景も異なる女性たちが、家に引き寄せられるように現れ、出会い、再出発する物語である。それ以外の登場人物はない。男性は後ろ姿やイメージ。電話など相手方でも、声すら出て来ない。ただ、その男性たちとの関わりにおいて、皆、どこかいわくありげで、表面的には何事もないようでも、「女性」として生きる上での、深い葛藤を抱えている女性たち。

 老境の女性(香川京子)の上に、人生の晩年に訪れた転機。その彼女の上に、戦争によって、無念にも、「自分に正直に生きる」ことなく犬死にした一人の青年特攻隊員との記憶と、その約束が、60年ぶりに蘇った時、他の女性たちも共鳴し合うように、自分自身の何かに出会い、女性としての新たな歩みを始めていく物語だった。客層も9割が中年以上の女性だったが、男性のぼくの琴線にも触れた。

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