『聴くちから』~The Lost Art of Listening~
「世界は、「人間関係」で出来ている。 そして人間関係は「聴くちから」で出来ている。世界一、大切スキル「聴くちから」
という日本語のオビがついていた。これがなかなか面白かった。著者は、マイケル・P・ニコズルというアメリカのセラピスト。この手のアメリカもの、「成功のための10のステップ」とか、「これだけすれば、簡単にこんな変化が起こる」などという、耳障りだけがいいHOW TO物が多い。ところが、本書に好感をもったのは、著者自身も「聴けない自分」をよく押さえている。しかも、おいそれと身につくものでないことを示しつつも、なぜ「聴くことが大切なのか」を解説し、誰もが「誰かに話を聞いてもらいた。この気持ちを分かってほしい」という願いを抱きながら、「相手の話をきちんと聴くこと」が失われている現状を憂いているのである。大方の人は、「会話は自然に流れいく」という幻想を持っているが、実はほんとうに円滑に流れるには、一見、不自然なような「聴く」努力が必要だという。しかし、それは苦痛をともなうものでなはく、人間だけに与えられた特別な才能(ギフト)~確かにその通りですわ。言葉を話すのも人間だけなら、ほんとうに理解できるのも人間だけですよね~であり、日常のたゆまぬ努力を重ねることで、円滑なコミニケーションや豊かな人間関係を結ばれている。
アクティブ・リスニング(積極的な傾聴)という言葉があるが、「言うは易し、行うは難し」で、実際の日常生活のなかでは、なかなかうまくいかない。その原因は何故かを知り、それを克服する実践を提唱されている。
話をきちんと聴けない本当の理由は? まず、その重要さを理解していない。と同時に、ほんとうの自分自身に気づいていないからだが、主な原因として、
1)私たちは、自分の欲求を抑えられない。
2)私たちは、偏った話の聴き方をしている。
3)私たちは、すぐ感情的な反応をしてしまう。
1)-①話し手に対して純粋な興味を持っている。
②自分の気持ちは抑えること(話を聴く時の鉄則)
「支配したい」「指導したい」「変えたい」という欲求のある ことに気づくこと。
話を聴くことは、
「自分自身を押し殺す」ことでもなければ
相手に「負けること」「降参すること」でもなく、会話の指 導権争いでもない。
③話を聴くことは大変なこと
④五つの状況パターン
⑴雑念や雑音などに気をとらわれてしまう
⑵次に何を言おうかと考えてしまう
⑶自分の解釈を述べてしまう
⑷「相手を支配したい」という気持ちが働く
⑸自分の問題で頭がいっぱい
⑤聴いていないのに、聴いているふりのパターン
⑴「そういえば私も…」(ホンネ、「次は私が話す番だ」)
⑵「まあ、なんてひどい」(過剰なまでの同情)
⑶「そだな、もし僕がきみなら」(ホンネ、愚痴ってないで 行動を起こせ)
⑷」こんな面白い話、聞いたことある」(ホンネ、聞いてい ても退屈なの)
⑸「そんなことくらいでくよくよするなよ」(一見、励まし) (ホンネ、君の悩みなんてたいしたことないんだよ)
話を聞くときに大切なのは
①話を聴くときの基本的スキル
1)第一ステップ 「注意を払う」
2)第二ステップ 「相手の考えを認める」
-①自分の話は後回しにしよう
-②訊きたいことがあるときは、あらかじめ伝えておこう。
-③話し手に(ちゃんと聞いていますよ)というサインを送ろう
-④どうしても集中できない時は素直にそう言おう(純粋さ)
3)第三ステップ 「自分の理解を確認する」
-①相手の言葉をフィードバックしよう
-②話の要点を自分の言葉で確認しよう
②言い争いを避けるためのスキル
1)「他人の気持ちに責任を感じる必要はない」という考え方を身につけよう
2)自分の主張に固執するのはやめよう。
などというのである。専門書ではなく、具体的なエピソードが多くてわかりやすいです。
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