『燃燈仏授記図浮彫』~MIHO美術館にて~
『大無量寿経』の正宗分(本文ですね)が、始まった冒頭に、過去五十三仏が名を連ねている。ただ仏様の名前がでてくるだけだが、これにも深いおいわれがある。「過去の久遠無量不可思議無央数劫に、錠光如来、世に興出して……」から始まって、52の如来が次次とお出ましになり、そして53番目に、法蔵菩薩のお師匠様である、世自在王仏が世に出られる。それこそ、途切れることのないめざめの連鎖、連続無窮のお働きが示されるともに、これは法蔵菩薩もまた、初めて仏になられるのではなく、久遠無量不可思議無央数劫の昔からの如来、つまり阿弥陀仏は久遠の古仏であることを窺うことができるのである。親鸞さまも、六首引の冒頭でおあげする、「弥陀成仏のこのかたは、 いまに十劫をへたまり」というご和讃とともに、
「弥陀成仏のこのかたは、 いまに十劫とときたれど、 塵點久遠劫よりも、 ひさしき仏とみへたまふ」
と和讃され、十久両実(十劫も、久遠も、どちらも真実)の立場をとられている。
まあ、これはこのぐらいにして、今日は、冒頭の「錠光如来」について触れたかった。ディーパンカラ(Dipankara)の訳で、「燈火を作る」(これもありがたいね。「めざめ」から「めざめ」の無尽灯=不滅の法灯なんだ)。別名を、燃燈仏として知られている。
釈迦菩薩(前世の釈迦)が、バラモンの青年修行者メーガ(スマティともいう)であった時、この燃燈仏から、「来世において悟りを開き、釈迦仏と なるであろう」との授記(予言)を与えられた説話がある。 この説話は古来より有名で、一般に「燃燈仏本生」と呼ばれているが、ひろく仏像の題材にされているが、題材のあらすじは、以下のようである。
メーガというバラモンの青年修行僧(釈尊の前生)がいた。燃燈仏(錠光如来)が都にやってくるということを聞き、蓮華を捧げて供養しようとしたが、すでに国王が蓮華が買占めており、入手することはできなかった。それでもあきらめずに探していると、蓮華を水瓶に插した娘に出会い、彼女に頼み込んでなんとか蓮華を分けてもらった。その蓮華を、燃燈仏に捧げると、蓮華が空中に浮かび、燃燈仏の頭上にとどまるという奇瑞があらわれた。さらに、燃燈仏の進む方向に泥水があることに気付いたメーガは、泥水の上に自分の髪を解き(とても長い間、結んだままだった)敷いて、燃燈仏の足が汚れないようにした。燃燈仏は、メーガに対して、「未来に釈迦となって生まれ、覚りを得るであろう」との予言をを授けられるのである。
何度か、このレリーフ(浮彫りですね)を見てきたが、MIHO美術館にも、ガンダーラ仏があった。4、5世紀のころのもだという。右のサムネイル(写真)をクリックしてもらうと、少し鮮明になる。立っておられるのが燃燈仏(錠光如来)、左下で土下座している姿が釈尊の前生で、自らの髪をとき、泥水の上に道をつけてくださっている姿である。この仏像を観るたびに、仏様の方が、土下座をして頼んでくださっている、ご修行させているのだなーと味わっていますね。 そして、授記どおり、12月8日、菩提樹の下で、仏陀(悟った、目覚めた方)になられるわけですね。そう、今日は、成道会だったんですね。
「久遠実成阿弥陀仏 五濁の凡愚をあはれみて 釈迦牟尼仏としめしてぞ 迦耶城には応現する」
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