9月に観た映画(1)「美しい人」「セプテンバー11」
久しぶりに映画のことを書こう。
先月は、映画館で10本、自宅のDVDで1本。1、「蟻の兵隊」(05年、日本)と、2、「バッシング」(05年、日本)については、ここでも触れたければ、いろいろな人にお勧めした。評判は上々。今月は、それ以外の映画も、なかなか収穫があった。
◆3、「9Lives(美しい人)」(05年、アメリカ) 監督ログリゴ・ガルシア◆
かなりお勧め度高い。邦題の「美しい人」より、原題の方が好きかなー。9人の女性たちが、さまざまな傷や、寂しさや、弱さや、ときにはそれをひた隠しに生き、または過去にとらわれ、突然、感情的にののしり、愛を求め、愛に傷つき、または愛に気づく、9つの短編小説風に構成されている。またがって物語に登場する(たとえば、ある話の主人公が、別の話では、看護婦としてちょい役で働いてたり、1話の女囚人が、別の話の中で、逮捕される場面が出てきたり、看守役の男が、別の話では、娘との葛藤抱える父親であったり…)のを、見つける楽しみもあったけれど、基本は、それぞれ別の9名の女性が主役。 1話目からどんどん感情が表出され、こちらの情感を揺さぶってくる。2、3、4話と目が離せなくなる。少し落ちいた話もつづき、静かな9話目のラストが好き。ネタばれになるので書かないけれど、カメラが360度回転して見せるシーン…。もしやと思ってけれどね。ジーンとしました。
監督曰く、「何かに囚われている人、マンネリに陥っている人、置かれていく状況から脱出できない人、成長できない人、絶望的な関係を断ち切れずにいる人などに、ぼくは興味を抱いている」。うーん。ここが気にいりました。
◆4、「セプテンバー11」(11’09’01)(02年、フランス)◆
9月11日の夜、京都みなみ会館での、1回きりのアンコール上映。「セブテンバー11」という、世界中11ケ国の映像作家で綴られる11編。まずは、イランのサミラ・マフマルバフの、アフガン難民の小学校のエピソードで幕開き。フランスの監督は、クーロド・シャーヒン(有名な「男と女」の人ですね)、ろうあ女性が、間接的に体験する9、11。イスラエルの監督は、同じ時に自爆テロの現場の、救出と実況放送(フィクション)の一こまから。そしてイギリスのケン・ローチは、チリで起こった民主政権を、アメリカと、アメリカが支援する軍事勢力が、大統領府を空爆して、民衆をテロリストとして徹底的な弾圧(虐殺)をおこなう、もうひとつの9.11。ウーン。これは知らなかった。そして、インドの監督は、アラブ系というだけで、犯人扱いされ、実際は、救助活動中に犠牲となり、後に英雄扱いをうけたパキスタン人家族を。アメリカのシャーン・ペンは、光が時に悲しい真実を照らすことになる秀逸一品。ほかに、ボスニア・ヘルルツャゴビナから、エジプトやブルキナファンのアフリカから、そして、日本の今村昌平は、戦時下で、戦場で精神を病み、ヘビになった男の話などなど。ラストのオチは「蛇足」だけどね。
多種多様。見方が変わり、立ち位置が変われば、事実も変わる。11名のメッセージは、どれも見応えあった。多様化した世界に、たった一つの価値観では、何も見えて来ないということ。今こそ、異質、異文化との出会い~つまり「聞く」ことの重要さが増すばかり。
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