9月に観た映画(2)「紙屋悦子の青春」「ある日、突然。」
◆5、「紙屋悦子の青春」(06年、日本) 監督黒木和雄◆
今年4月亡くなられたは、黒木監督遺作。このところ、監督のドキュメンタリーや特集番組をよく見る。この映画のメイキングも見たし、追悼上映会で原作者の話も聞いたので、かなり楽しみにしていた。いわゆる戦争レクエレム3部作の後も、また戦時下の市井の生活をとられた、静かな反戦映画。戦争を知らないものには、戦争や戦時下って、もっとエキセントリックで、非日常的で、勇ましく、または悲惨で、悲痛というステレオタイプで考えている。でも、ここでは、ごく日常で、でもムードは非日常で、生と死が交差しながらも、会話や振る舞いは普通で、時にとてもユーモアがあり、温かく、それでいて強烈な寂しさや悲しさがある。それを感傷的にならずに、見つめるものには控えめに伝わってくる、上質の映画だった。個人的には、「美し夏キリシマ」や、前作の「父と暮らせば」の衝撃度のほうが大きかったのは、確かだけれど。一般には、地味すぎるんじゃないかなー。
◆6、「ある日、突然。」(02年、アルゼンチン)監督ディエゴ・レルマン◆
もし、会員の無料招待の作品じゃなかったら、絶対に見なかった。第一、こんな映画、普通は見る機会もない。期待していないときに、ヒットがある。有名云々、大作云々じゃないんだよね。26歳の新鋭監督の、初長編作品。全編、ザラザラしたモノクロの映像。そして、どこかオフビートで、とぼけた感覚もある。容姿不自由な、小太りの女性が、(解説にはパンク風とあってけど?)二人組の女性に、「その悲しそうな表情がタイプなので、セックスしたい」と、突然、ナンパされて、車で連れ去られて、不思議な旅が始まる。風変わりなロード・ムービーなんだけれど、一カ所に留まってからの、3人の変化が秀逸。それぞれの内面の孤独や葛藤が、新たな一面が現れてくる。新しい青春ロード・ムービーかも。
いや、ここまで書いて、とても疲れた~。ここで、ちょうど半分。さてさて(3)(4)と、書く力や時間があるでしょうかね。
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