『アダン』~田中一村~
なぜ、急に田中一村のことを書いたかというと、今月、「アダン」という映画を観たからである。
昨年、再び奄美を訪れたとき、彼が晩年を過ごした寓居(移築場所らしいが)を尋ねた。家というより、みすぼらしい小屋たった。ただ庭には、南国の木々や草花が、鋭い光を浴びて輝いていた。モダンな最新の記念美術館と比べると、まったく無名の生前と、その後世の評価が一目瞭然だった。
たまたまお守りをされていた男性から、ちょうど奄美で先行ロードショーの「アダン」という映画の話題が出た。「アダンという少女は想像上の設定だけど、映画はすばらしかったよ」と言われていた。それで、会員になっている映画館にリクリストを出したら(そのせいではないだろうけれど)、京都みなみ会館でも上映れることになった。
ドキュメンタリーではないので、必ずしも伝記どおりではない。かといって、監督の解釈ばかりで、あまりに掛け離れるても、おもしろくない。それに、単なる物真似でも、何も伝わってこないから、こういう作品はなかなか難しい。榎木孝明扮する田中一村は、どこか明るい、楽天的な考えで、それでいて絵のために、妥協せず、真摯に、人間の極限に近い執念で生きるひとりの男の狂気に似た信念のようなものが、垣間見れた気もした。
ただし、現地を訪ね、その絵に触れている分、ぼくにも、少しぼくなりのイメージができあがっていて、物足りなさを感じたのが、正直な感想。悪い映画ではなかったけれど、もう少し狂気の部分がほしかったかな。
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