「破獄」
「破獄」というタイトルに引かれて、1冊の本を手にした。もう20年も前のことだから、まだ学生時代である。たったいま、ネットを開いたら作家の吉村昭氏の逝去のニュースが目にとまって、すぐこの本を思い出した。(7月31日に、79歳で逝去されたそうだ。)
お盆には、破地獄の文といわれる偈文をあげるが(浄土真宗の伝統と違うのかもしれないけど)、これは、別に「地獄を破る」話ではない。破るのは、監獄。昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口。監獄に閉じ込められた男と、彼を閉じ込める男たちの壮絶な戦いを、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡した、力作だった。厳重極まる警戒と(犯罪者に人権などない戦前のことですから)非人間的な扱いを受ければ受けるほど、不可能を可能にした男が、最後の府中刑務所では、その試みすらしない。そこには、ひとりの所長との出会いがあった。恐れでも、憎しみでもなく、厳罰でもない。大胆に、彼を温かく人間として扱うことだったのだ。
昔のことだけれど、けっこう感銘受けたなー。
別のこと書くつもりだったけど、こんな時もあるよね。
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