『胡同(フートン)のひまわり』
2本目も、中国映画にした。「胡同のひまわり」。「こころの湯」のチャン・ヤン監督。これも佳作で、共に、近代化の波が押し寄せ、取り壊される北京の下町の、父と子の葛藤がテーマ。舞台や展開、よく似ていますが、「ひまわり」のほうが、ぼくにはググッときた。 当時の中国人の、さまざまな形で影をおとした文革での悲劇の影響が色濃い。彼の名は、向陽(ひまわり)。貧しくも、北京の下町、人情豊かな胡同(フートン)で、共同生活を送っている。9歳になった彼の元に、突然、別れた父が帰って来た。画家として、知識階級だった父は、残酷な強制労働を虐げられて、無残な形で、画家としての生命を絶たれたのだ。息子の才能を知った父は、英才教育を施し、自らの夢を託した。しかし、厳しく接することでしか、愛情を示すことができない父と、息子はことごとくぶつかり合っていく。しかし、近代化の波が押し寄せ、生活スタイルも変貌する。胡同(フートン)の取り壊しも決まる。世間並みの生活を求める母は、そんな不器用で、安らぎのない父に、感情的になることも多い。しかも、父が強制労働を強いられたのは、同業の親友の密告だったのだ。傷つき、心を閉ざし、不器用な父。
ときに、暴力的なまでの強引さで、息子を導こうとする父。画家として、父の影響を強く受けながらも、その愛情を受け入れられない息子の葛藤。所はかわれども、この父と息子の姿に、わが身を重ねましたね。男がなく映画かな。今日は、となりの初老の男性、泣いていました。時に子の立場になり、それでいて時に父の立場になったりもする。最初と、最後、新しい生命が生れる時に、「ひまわり」が使われる。失意の強制労働から戻った父が、ひまわりのタネを蒔く、なにげないシーンが、ラスト効いてくるように思えた。おすすめ度は高い。
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